第6章 あたたかい場所
暫くの時間身体を動かしていて、お昼頃になった為、お弁当を食べに教室に戻った。
流石に真夏日なので水分も多めに持ってきておいたのだが、どうやらそれは正解だったようだ。
「蝶ちゃんよくこんなに持ってきてたね…お陰で助かってるわけなんだけど」
『うん、でもこれだけじゃ午後の分心配だね。お昼食べたら先に飲み物買いに行こっか』
「まあ、体調崩しちゃ元も子もないもんね。了解」
中也さん毎日こんなの食ってんだね、羨ましいなんて言いつつお手製のお弁当を食べてもらう。
カルマ君の口に合うかどうかが不安でチラチラとそっちに目を向けるのだけれど、パクパク食べてくれているだけであんまり反応が無い。
「…蝶ちゃん?どうしたのさっきからこっち気にして」
『ええ!?な、何にも!!』
「ふーん……大丈夫だよ、心配しなくってもすっごい美味しいから。ちょっと羨ましくって中也さんに妬いてただけ」
『そ、れは言い過ぎっ…』
サラッとそんな事を言ってのけてしまうあたり、本当にフランクな子だなぁと思う。
日本でこんな人なんて少ないし、何というか…
『…太宰さんみたい』
「ん?俺が?」
『!う、うん。雰囲気だけだけど』
カルマ君はレッツ自殺、よし心中!なんて事言わないし女の人口説こうとしたりしないけど、頭もいいし、周りのことよく見てる。
それに何より、私に対する接し方があの人ととても似ているのだ。
「へえ、それって喜んでいいの?」
『…………多分』
私もカルマ君も苦笑いになって、頭にあの自殺マニアさんを思い浮かべた。
飲み物を調達する為私服に着替え、スポーツドリンクと水を確保して校舎の方へと戻ると、グラウンドに何人かが集まっていた。
いたのは虫取りに来ると言っていた四人と、これもまた意外な事に岡島君。
そして
『…………え、カルマ君、あれなんだと思う?』
「カブトムシに擬態してるでっかいタコ…あ、カブトムシの皮を被った殺せんせー」
『見間違いじゃなかったのが嘆かわしい…』
カブトムシの被り物を頭と背中に被って、何故か生徒達にアイスを配っている殺せんせーだった。
とりあえず合流しようということで木の陰から出てそちらに歩いていけば、真っ先に岡島君が反応を見せる。
「ん?……なぁっ!?…………ま、眩しい…っ、真夏の女神が俺に微笑んでいる…!!!」