第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
「本当にそう思ってるの?…もしかしたら蝶ちゃん、中也さんの事、そういう意味で好きなのかもしれないじゃん」
カルマの言っていることには俺でも薄々思うところがあるくらいで、けれどもどこかでそうなってしまうと何かがいけないような気がして、自分の気持ちにストッパーをかけてしまう。
極めつけは蝶からの、“どっちの好きか”というあの言葉。
蝶がいったいどういうつもりで聞いたのか分からなくて…というより、俺の都合のいいように解釈するのはやはりいけないような気がして、好意の種類を聞かれていたのだろうが、好意の度合いと解釈したフリをして聞き返したのだ。
「……ねえだろ。第一蝶は、それこそ手前みてえな普通の奴らと一緒になった方がいいんだよ。折角学校にだって通えて、不可抗力とはいえ裏の世界から足を洗ったんだ…俺が重荷になってちゃ、蝶を幸せにはしてやれねえんだ」
何かが…思いつく事だなんていくらでも出てくる。
蝶を、本人の思う“普通の女の子”とやらにしてやるのが、あいつにとって一番の幸せなのではないかと自分の中ではいつも思っている事だ。
だからこそ、本来ならば一緒に住むのだって、関わりを持つ事だってしない方がいいに決まっているのに。
自分の欲が、何よりも蝶のお願い…言い方を変えれば蝶のほぼ唯一と言っていいほどに譲らないわがままが、俺をそう行動させてはくれない。
ポートマフィアなんてもの、殺しもやめて武装探偵社に入って学校にまで行けるようになったんだ。
今更それを重荷にさせちゃ……俺が足枷になってちゃ、いつまで経っても表の世界に生きることなんて出来ないだろう。
「中也さんが重荷になるだなんて、蝶ちゃんなら考えもしないと思うけど」
「今はな。だが、蝶が心の底から表の世界で生きたいと願えば、自然とそうなるようになってんだよ。…表の世界で生きていくっつうのは、裏の奴らと関わりなんざ持ってちゃ全部が邪魔になるもんだ」
「うん、そうじゃなくてさ。そもそも蝶ちゃん、そんなにそこにはこだわってないと思うんだよ。どっちかっていうと中也さんと一緒にいる事が一番大事なんじゃないのかな」
心のどこかでそんな事は勘づいてはいるんだ。
蝶の一番大事にしたいものは、そんな何でもないようでも俺にとっちゃあ一番嬉しいものなんだって事くらい。
ただ俺に、懐いてるだけなんかじゃねえって事くらい。