第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
「言っとくが、別に俺は特別蝶に何かを強いるような事はしてねえし、何も教えちゃいねえ。今日のあれは…多分昨日俺が調子に乗ったのが影響しての事だろ、流石にあれは蝶にしてみりゃやりすぎたもんな気がする」
あれ?と聞き返すカルマに、昨日ケーキを食わせる時に少し調子に乗って、それこそ間接キスを意識させるような食べさせ方をさせたのだと説明した。
生々しい表現をするのも教育上まだ良くはないだろうと思い、軽めの表現にとどめておいた。
「そんな事してたんだ、あの純粋で中也さんに従順な蝶ちゃんに」
そりゃあ逆らえなくもなっちゃうだろうねえ…などと呟きが聞こえ、今度は俺が聞き返す。
そしてそれと同時に、やはりこの少女の純潔を奪っていってしまっているのだなと再認識し、自分に少しの罪悪感が芽生えた。
まあ純潔を奪っていっているといっても、蝶は綺麗なままなのに変わりはないのだが。
「蝶が俺に逆らえない?確かに何したってあんま嫌がったりはしねえが」
「だって蝶ちゃん中也さんのこと大好きだからね、中也さんが想像してない位には…って、何してもとか、本当に蝶ちゃんに何してんの中也さん?」
普通なら何もしてねえよとムキになって言い返していたところだろう。
しかし、そんな事よりも引っかかったのが、どこかで口にした事のあるような言葉だった。
「は…?俺が想像してない位には?………何って、最近俺の方からくっつきに行ったり甘やかしてやるようにしてるくれえだよ。蝶の気持ちがこういう方向に向かねえ限りはちょっとばかり我慢しなくちゃなんねえだろうがな」
嘘つけ、何が自分から甘やかしに行っているくらいだ。
自分が抑えきれなくなって…蝶に意識を持っていかれて、危うく一線超えちまおうとしてんのは誰だってんだ。
「ああ、もう本当面倒い事考えてるよねえ…もういっその事告白でもしちゃえばいいのに。見てて焦れったいしいい加減にこっちがイライラしてくるよ」
「告っ!!?てめっ…何カルマがイラつくんだよ!?第一こいつは俺の事なんざ育ての親としてしか見てねえんだぞ!そんな奴に告白なんざ」
「本当にそうなの?」
カルマの声が妙に真剣なものになる。
自分の心にすっと響くような言葉。
「はっ…、ちょっと俺にほかの奴らよりも懐きすぎてるだけだろ。甘えたがりな奴だから、その変はちゃんと見極めねえと、あいつに悪ぃ」