第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
「蝶ちゃん寝ちゃったんなら、もう話せるでしょ中也さん。回りくどいの嫌だから単刀直入に聞くけど、中也さん蝶ちゃんの事好きだよね?」
「……俺は元々蝶の事が好きだが、それが何か問題あんのか」
蝶が寝たからと話を始めたカルマは、最初から俺の気持ちを見切っていたかのような発言をする。
今日の俺の様子を見てどこかそう思う節があったのだろうか。
一応こいつや広津さんに立原がいたから、蝶が見られて嫌になるようなレベルの事まではせずに抑えたはずなのだが。
中学生の餓鬼に恋愛事の話なんぞをするというのはなんとなくかっこ悪いような気がして、曖昧な返事をした。
「元々って…まあいいや。ううん、なんか最近蝶ちゃん様子変だったし、何でだろうって思ってたんだけど……今日の様子見て納得いったよ」
「蝶の様子が変?」
ちらりと横目で、隣の席ですよすよと眠っている愛しい少女の顔を見る。
自然と唇へと視線が導かれてしまうのだが、流石に状況くらいは弁えられるため、すぐに運転とカルマの話へと思考を戻した。
「今日横浜から学校に戻ってきてから色々あって、なぁんかいつにも増して親切だったんだよ。だから何かいい事でもあったのかって聞いたんだけど」
普段なら、蝶にとって何かいい事があったりすれば、あいつはすぐに顔に出るためにすぐ分かる。
だが、それが今日は態度に表れていたらしい。
「顔より先に態度に出るなんか珍しいな、探偵社の方で何かあったのか?」
「…大体横浜から戻ってきて機嫌が変わってたら中也さんの影響だから、今回もそうとにらんで聞いたんだけどね?」
カルマの言葉に思わず吹き出す。
そして恐る恐るもう一度蝶の方を向いて、意味は無いのだが、なんつう事をしてくれてんだという目線を送る。
「いつもなら恥ずかしがって誤魔化そうとしたり、すぐに逃げたりしちゃうんだけど…今日は素直にうんって認めちゃったんだよねえ。控えめな言い方だったけど、ちょっと顔赤くして本当に嬉しそうな顔してたよ、こっちまで幸せになっちゃった」
「じゃあそれは俺とは関係ねえ事だったんじゃねえのか?」
口では余裕をひけらかしてそんな事を口走ってはいるが、今日蝶に自分がした事を振り返ってみれば、蝶からしてみたらかなり刺激の強い事をしていたように思えた。
いったいどれだ、あいつがそんな反応を見せるに至るまで嬉しかった事は。