第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
流石だ、偉いと…私を自分の誇りだと言ってくれる中也さんに、胸がキュウッと締め付けられる。
たまにこうやってストレートに言われるから心臓に悪いんだ、この人は。
私の気持ちなんて知らずに、甘やかしていなくてもそうやって私の事を褒めちぎるから。
だから余計に、もっともっと好きになってしまうのだろうか。
『ん……中也さんが言うなら』
「おう、いい子だ。んじゃあそろそろ解散すっか」
いい子だと言われて気分を良くして、恥ずかしさが抜けてきて私の本能が中也さんに甘え始めようとしたその時。
タイミングが良いのか悪いのか、中也さんは私からすぐに手を離して姿勢を戻してしまった。
そんな事をされると、中也さん症候群を発症してしまったばかりの私にはとんでもないおあずけとなってしまうもので。
すぐに中也さんの外套をキュ、と摘んで、皆に続いて訓練室の出入口へと向かう中也さんをもっと独り占めしたくて、私の事に気付かせる。
「!蝶?どうした?」
『…………もう終わり?もう、してくれないの?』
「お前…っ、歩きながらな」
『!!…はぁいっ』
中也さんは宣言通り、歩いていきながら私の頭をまた撫で始めてくれた。
はらい退けられるどころかお願いを聞いてもらえてご満悦なのだが、私の前を歩く中也さんの顔は見えない。
私の事で頭がいっぱいになってればいいのにななんて、バレバレかもしれないけど、いつも思ってる事だけど、中也さん症候群にかかっている私は特別そう考えていた。
入り口の少し外にいる三人はこちらを見ながら何かを言っているようだったけれど、嬉しさでいっぱいの私の耳には届いてこなかった。
『えへへ、帰るまでしててもらうの』
「……帰ってからはいらねえのか?」
『!!いるっ』
「ん、上出来」
更にたっぷりと撫でられて、もう中也さん以外には何も考えられなくなった。
結局、私がこうやって中也さんの事ばっかり考えさせられちゃうんだよなあ…。
「……おやおや、微笑ましい光景だ」
「ありゃ相当照れてるね、満更でもないって顔してる」
「結局体術とか強さとか関係なしで、やっぱ最強はあいつだな」
「中也さんに関しちゃ、ある意味蝶ちゃんに強いけど、一番蝶ちゃんに弱いもんね」
「最終的には、蝶には誰も敵わねえんだよ多分。なんつーかこう、根本的な部分から癒されんだよな、あいつ見てると」