第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
じい、と中也さんとカルマ君の様子を見ていれば、一段落着いたのか中也さんが攻撃をやめた。
「なかなか筋がいいじゃねえか。骨のある奴は好きだぜ俺は…ま、最も、もっとちっせえ時の蝶の方がよっぽど手強いがな」
「そこと比べるのは流石に勘弁してよ中也さん、正直まともに闘って勝てるのって中也さんくらいなんじゃないのそれ」
「まあな。あいつは俺の自慢だよ、確かに元から理不尽な強さではあったが…それを普段感じさせねえのも、そして努力を怠らねえのもある種の才能だ。あいつには俺の全てを叩き込んであるから、それこそ万全の状態であいつに敵う奴なんか普通いねえぜ」
立原と広津さんから聞いていたように私の事を自慢して、本当に心から尊敬したような言い回しをする中也さんに、なんだかこそばゆい気持ちになった。
「……!どうした?」
すっと立原の背中に隠れて二人の方をチラリと覗き、何でもないと立原に返す。
中也さんが私の事を話す表情がとても穏やかで嬉しそうで、いつもとはまた違った恥ずかしさが私を襲う。
「お、射撃の方も終わってたのか!どうだった立原、うちの蝶のレクチャーは?」
すげえだろ!と言うように立原に駆け寄って胸を張る中也さんに気付かれないよう息を潜めた。
「聞いてた以上に的確な上に、本当によく見てくれましたよ。使う時間全てが無駄なく効率よく組み立てられていて、今日は小手調べぐらいで終わるものかと思ってたのに前よりすっげえ撃ちやすくなりました」
言い終わってから、ありがとうなと言って少し横にずれる立原。
必然的に私の姿が中也さんに丸見えになってしまうわけで、すぐさま立原のジャケットの裾を掴んでまた後ろに隠れた。
「!蝶、お前そんなとこにいたのか?何でまた立原に隠れてんだよったく…」
苦笑いを浮かべる立原だったが、私に気が付いた中也さんは笑顔でこちらに歩いてきて私の横に来ると膝を曲げる。
私と目線を合わせるように屈んで頭にクシャリと手を置いて、機嫌よくニカリと笑いかけられ、今にも心臓が飛び出しそうな程に顔に熱が集中した。
「ほら、ありがとうってよ。よくやったな、流石だ、偉いぞ!やっぱお前は人に教えんのも上手いんだな」
『…っ、教えられる程じゃ、ないのに』
「射撃に関しちゃ専門外だが、俺の誇りが何言ってんだよ。もっと胸張って堂々としてりゃいいじゃねえか」