第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
『もうずっと一緒にお仕事なんて出来てないんだけどね。……うん、大好き。私の自慢の先生で、私の自慢の中也さんだよ』
「そうか、やっぱ育ての親とは言う事も似るもんなんだな」
今度はこちらがきょとんとする番だった。
立原の方を向いて首を傾げると、たまに自分の部下を鍛えるような事がある度に言っていることがあると話される。
「俺の自慢の一番弟子が八歳くれえの時にゃ、手前らなんかよりももっと恐ろしかったぜって、初めて鍛えるような新人共には毎回言ってるし」
「ああ、そうだね。それと、軽く聞き飽きるくらいには、うちの蝶くれえに骨のある奴はいねえのか、経験も実力も敵わねえのに努力でも負けてちゃ話にならねえぞ……とか。我々武闘派組の体術要員からよく聞いている」
『な、何それ…っ、私の話なんかしたって知らない人多いはずじゃ』
蝶ちゃんは組織内でも、新人の間でも有名さと広津さんに微笑まれて、顔を下に向けた。
「中原幹部や俺らは勿論だが、尾崎幹部に首領に…あの芥川までもが認めてるってな。最近じゃあお前本人を見た奴も増えてきてるし、良い具合に組織全体の士気向上に役立ってるよ」
『お、尾ひれつけすぎなんじゃないの!?そんな褒めたって何もあげないんだから…あの人私が知らないところで自慢話し過ぎてて心臓破裂しそう』
お前も幹部の事言えねえだろと、苦笑いで返される。
最も幹部にお前の話を聞きに行けば最後、新しい仕事が入るまで惚気話と自慢話のオンパレードだがと、経験談を交えた日頃の様子についてまで教えてくれる。
「本当、あの人にそこまで言わしめるだけの事あるぜ蝶は。お前がいなかったっつう間もずっと、特別幹部っつったら、生ける伝説みてえな単語になってるからな」
そうか、中也さんも私と同じような事してるんだ。
育ての親だから似たのか……私が似たのか中也さんが似たのか。
どちらにせよ、恥ずかしいけどとても嬉しい話だ。
彼の自慢になれていた事が、離れていた間もずっと私が彼の中で生きていた事が、彼によって組織の中でも生かされていたという事が。
だから俺が初めてお前を見た時、こんなちっせえ奴が本当にそうなのかって驚いたし、やることなす事全部に驚かされたよと、立原からも嬉しい事を言ってもらえた。
『……持ち上げすぎ。立原も中也さんも皆』
やっぱり可愛げのない私は、こんな口しかきけないのだ