第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
「うわあ、中也さん蝶ちゃんに何仕込んだの。完全に教育されちゃってるじゃないこれ」
「人聞きの悪い言い方してんじゃねえぞおい!?俺だって今混乱してんだよ!!」
カルマ君と中也さんの少し大きくなる声から顔を背けていると、何故か中也さんが焦り始める。
「蝶ちゃん、よく中原幹部の無茶振りに応えて…やはりいい子に育っている」
珍しく茶化すように言う広津さんに中也さんは更に驚きの声をあげていた。
そしてそれを楽しむかのように、今度はカルマ君が私を呼び、そちらをチラリと向けばカルマ君も箸を持って待機している。
「蝶ちゃん!何なら俺のも食べていいよ!」
「何やってやがるカルマ手前!?誰の許可を得てんな事!!!」
『し、しない!絶対しない!』
再び顔を背ければ、カルマ君は楽しそうにちぇっと声を漏らし、中也さんは両手でガッツポーズをして涙目になっている。
『……広津さん、立原、もうデザート三人で食べちゃお。この二人ヤダ』
「あ!?ち、蝶…ヤダって」
「あ、俺もなんだそれ」
中也さんとカルマ君の声を無視して即席デザートを広津さんと立原、そして私のテーブルに並べる。
最初立原はきょとんとしていたけれど、広津さんがいつもの調子で食べているのを見てか、美味しそうに食べ始めてくれた。
勘弁してくれ、謝るから!と必死の中也さんに少しだけ優越感を感じて、ニヒ、と悪戯っぽい笑顔になる。
『中也さんとカルマ君は家に帰ってからね。立原にアイス奢らせてそれ使って仕上げするから』
「蝶ちゃんたまにあくどい事するよねえ、いじめられすぎると中也さんいつか泣くんじゃない?」
カルマ君と二人で中也さんの方を見てみれば、涙目になって本当に嬉しそうに、感動したと言わんばかりに天を仰いで拳を握っている。
こちらの会話は聞こえてはいなかったようだ。
「…あれ、もしかして手遅れな感じ?」
『知らない、私何も見てない。でも中也さんはやっぱり素敵』
「褒めるか現実逃避するかどっちかにしようよ」
『褒める以外の選択肢がなくなってくるから大変な事になるよそれ』
想像ついたとカルマ君の表情が引き攣り、再び中也さんの方に目線を向けると、何かを崇めているような声が聞こえる。
「神も仏も信じちゃいねえが間違いねえ、この世に白石蝶という名の天使は存在する…」
『ごめんカルマ君、やっぱ何も見てない私』