第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
首領にもらった許可というのは、厨房と食材の使用のこと。
そして味見ついでに首領にも先に料理を全て食べていっていただいた。
今日は人数もいるし、折角だから皆で食べればいいと思って、機嫌を直すついでに作ろうと思ったのだ。
「まさか蝶ちゃんに料理を振舞ってもらえるとは」
『折角ですから。もう時間も時間ですし、お腹空いたままじゃトレーニングも出来ないでしょう?』
少し多めに作った料理を全て並べたつくえの周りに着席して、皆に食べてもらっている…のはいいのだが。
涙目になって食べ続ける絆創膏男が一人。
『……カルマ君』
「はいよ」
私の思った事を汲み取ったカルマ君に合図を送れば、立原と私の間に座っているカルマ君が、立原に近づいて話しかけた。
「蝶ちゃんのご飯、美味しいのは分かるけど…そんなに泣いちゃうんならあんまり食べれないよね?俺が代わりに全部食べてあげよっか」
「だ!!?誰がやるか!折角の蝶の料理を…っ」
『じゃあ泣きながら食べてるんじゃないわよ!立原だけデザート抜きにするわよ!?いいの!?』
デザート抜きと言えばぶんぶんと首を横に振ってガツガツと勢いよく料理にがっつく立原を見て、呆れたように息を吐く素振りを見せつつも、内心結構嬉しかった。
思えばこの人は、プリンを一つ食べるのにだってあんなに感動して喜んでくれて、いい嫁になりそうだとまでストレートに私に言ってのけた人物だ。
自分の作ったものをここまで素直に褒められることなんて余りないことだから、少しオーバー気味な反応を見せられていても、私からしてみればとても嬉しいことだったのだから。
『全く…』
「蝶」
何ですか、と言おうと目の前に座る中也さんの方を振り向けば、彼は箸に私の一口分程の量のおかずを乗せて、頬杖をつきながらこちらに差し出していた。
『っ…ち、中也さん!何で今っ』
「今じゃなかったらいいのかよ」
カルマ君が冷やかしの声をあげ、広津さんと立原は目を見開いて驚いていて、三人の視線を感じて更に顔が熱くなる。
「……冗談だよ、悪かったな…………っ!?」
恥ずかしがっている私を思ってか退こうとした彼だったが、離れていく中也さんの箸にとてつもなく勿体なさを感じてしまって、勝手に身体が動いてしまった。
更にそれで恥ずかしくなって顔を背け、ゴクリとよく噛んだご飯を飲み込んだ。