第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
パァン!!!と大きく響き渡った音と、その直後にまた響き渡った何かが崩れるような音に、少し遠くにいた三人も目を向ける。
「立原!?……って、蝶、お前何して」
「蝶ちゃん、流石に立原君にもその教育はやりすぎなんじゃ…」
「……いや二人共よく見てみなよ、あれどうみても立原さんが何かしたでしょ」
わなわなと震えて、壁にめり込んだ立原の方をキッと睨みつける。
ピクピクとしばらく大人しかったのだが割とすぐに起き上がって、こちらを振り返る立原。
『お、乙女の敵!!立原最低!そういうのは気付いてもさり気なく気付かせないようにするものでしょう!!?』
顔に伝わった衝撃でか何でか鼻血をツー、と流す立原に逆ギレしているかのように暴言を吐く。
「い、いや!でもあのままだったらお前が恥ずかしいんじゃねえかって」
『問答無用!鼻血流しながら言ったって説得力無いわよ馬鹿!!私ちょっと出るから手首解して腰安定させて撃っときなさいよ!?あとちゃんと鼻血止めなさいよね、貧血になるから!分かった!!?』
言うだけ言って、分かったかと聞いておきながらも返事なんて待たずにすぐに訓練室から走って逃げていった。
中也さんやカルマ君のいる前で何があったかなんてとても言えない、はしたない子だって思われる、行儀悪い子だって思われる!!
もうダメだ、タイツ履いてるのにそんなの関係なしで恥ずかしいものは恥ずかしい。
『……っ、アイス五つは奢らせてやるっ』
立原に悪態をつきながらも、外に出て扉を作り、首領の部屋へとお邪魔しに行った。
少女のいなくなった訓練室で、立原は呆然と鼻を止血していた。
「で、何したの立原さん。蝶ちゃんかなり怒ってたみたいだけど?」
「あいつがあんな容赦無く相手の事ひっぱたくとか普通ねえぞ、マジで何やらかした?黒い仕事してる時でだって素手であんなには…」
「黒っ!!?」
黒という単語につい先程見た少女の素足の隠された黒いタイツ…という名のスカートの中身を思い出し、立原は思わず反応を見せる。
「ん?」
「うん?」
「…あ゛?」
「…すんません何でもないっす。いやもうほんと、…すんませんっしたああ!!!」
中原から溢れ出る殺気ととてつもなく怒りを孕んだその声に、全身全霊の土下座を上司である広津、そのまた上司である中原、そして中学生の赤羽に向けていた。