第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
広津さんは姿勢を元に戻して床に転がる立原に顔を向け、言い放った。
「立原君、蝶ちゃんはこれから射撃の訓練…というか射撃をするそうなのだが。どうだい、彼女に鍛えてもらってみるのは?」
立原の痛みに耐えている声が響いていたのに、一瞬でその場が静かになった。
「え、広津さっ……蝶に鍛えてもらうって、え!?」
ガバッと起き上がった立原が広津さんに食いつく。
「へえ、お兄さん銃使うんだ。それなら蝶ちゃん確かに適役だね、今日は俺は中也さんが見てくれるらしいし」
何故か面白そうにして話に乗るカルマ君の方を向けば、中也さんが口をぱくぱくさせてこちらを見ていた。
『私が、教える…?必要あるんですかそれ、立原もう十分強いのに』
ねえ?と中也さんに聞けば、立原が更に焦り始めた。
「いやいやいや!お前が言ったって説得力の欠片もねえぞおい!?」
「ま、まあ立原は確かに技術もあるな」
「幹部まで!!?」
ほら、と広津さんの方を振り返ればクスリと笑ってまたにこやかになる。
「立原君は最近前よりもよくここに通うようになったのだが…少しでも蝶ちゃんに追いつけるようにと必死なんだよ。だから君に直接教えてもらうのがいいんじゃないかと思っていてね」
「んなっ!!ちょっ、何バラして…ああああ!!!」
広津さんの隣でまた焦り始める立原。
私に追いつけるようになんて、そんな風に考えてただなんて、知らなかった。
「ああ、そういや言ってたなんな事。蝶、とことん教えてやれ」
『!中也さんまで…分かった、立原が良いんなら』
中也さんの言葉で了承して立原の方を向けば、目が合ってからグッ、と何かを堪えたような声を出す立原。
「…………頼む」
『…うん、じゃあ教える代わりに今度ケーキ買って♪』
「こ、こいつっ…!!!」
わなわなと震える立原を放置して射撃の準備を再開しにスキップで戻った。
中也さんとカルマ君の方に立原と広津さんは行ったようで、準備の音で聞こえなかったけれど何やら話している様子。
「立原、手前も苦労してんなあ。あいつがあんなに強くなけりゃもうちょっと楽だっただろうに」
「ぐっ、男として情ねえっす…銃捌きでこんなに差がついてるってのにあいつ能力使ったら最強じゃないすか」
「でも、きっと役に立てる時が来るさ」
「……あいつが危ねぇ時に、少しでも力になれれば」