第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
「あ、そこなんだ!?…まあ何にせよ、中也さんには常識があるって分かったし、やっぱ原因はこの素直さなのかな」
『?とりあえず、用意しに行こ!しおり重たいだろうし持つよ』
カルマ君は再度溜息を吐いてから、私の頭に手を乗せた。
「女の子にこんなの二つも持たせられませんっての。寧ろ俺が持つべきでしょ普通…っと、」
そしてもう片方の手で私からヒョイっとしおりを取り上げた。
『……びっくりした、カルマ君本当に他より力あるんだね。喧嘩以外にもやっぱりちゃんと身体が出来てるのかな』
「まあそれもあるだろうけど、一応俺だって男なんだからね?忘れてもらっちゃ困るんだけど」
『忘れるわけないでしょそんな事、馬鹿じゃないんだから』
何言ってるのと言わんばかりの目できょとんと見れば、何故か頭を抱えられた。
「お邪魔しまーす」
カルマ君が泊まりの用意をしてから、彼の家の中で扉を作り、帰宅する。
間延びした調子の彼のお邪魔しますに、家へ誰かがお泊まりするという事にドキドキしていた。
「来たか。荷物は俺の部屋にでも…カルマ、蝶はどうした」
中也さんの発言に肩をビクッとさせて、扉に少しの隙間を開けて中の様子をチラリと覗く。
「…扉の向こうに隠れてる。ここ自分の家だよね、何で蝶ちゃんが遠慮してんの?」
『え、遠慮とかしてない!』
中を覗く片目に二人の視線が刺さり、ついつい下を向く。
「とりあえずカルマは俺の部屋…そこだから、中に荷物置いてこい。蝶は任せろ」
「オッケー、じゃあ遠慮なく」
スタスタと荷物を持って中也さんの部屋に入っていったカルマ君の背中を見送れば、ズンズンとこちらに中也さんが歩いて来るのが分かった。
『え、中也さっ…あの、わ、私もうちょっとしたら入りますか……らっ!?』
そして扉の前で身体を縮こめていれば、私の頭の上から扉の端を掴んで開き、私の腕を引っ張って自身の胸に抱きとめる。
『!?…え、っと!?』
ただでさえカルマ君が泊まりに来るって事だけで恥ずかしかったのに、今度は状況が理解出来ずに頭の中が中也さんでいっぱいになる。
「…折角早くに仕事終わらせて待っててやったんだ、何か言う事あるんじゃねえのか」
私を待ってた。
それが聞けただけで、恥ずかしさは勿論あるけど、嬉しさが胸の奥からこみ上げる。
『!た、ただいまっ…ありがとう!』