第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
私の心配はまず中也さんの心配症と、そして私が教えるだけで大丈夫なのかなというところ。
なのだが、カルマ君の表情が引きつり始める。
「え、いや蝶ちゃん、そんなに簡単に決めちゃっていいの?」
『え?だって南の島での暗殺夏期講習までにはものにしたいでしょ。それならちゃんとそれに間に合うようにしなきゃだから、とりあえず中也さんをなんとか説得しなくちゃ』
待って待って!!と両手を前に出して本格的にカルマ君が焦り出す。
「いや、来てくれるっていうのは嬉しいんだけどさ。俺と二人っきりになるんだよ?それ本当に大丈夫なの?わかってる!?」
珍しく取り乱した様子でこっちが気圧されそうになる。
『う、うん?えっと…カルマ君さえ良ければ大丈夫なんだけど』
返答すればああ、とどこかやつれた様子で項垂れるカルマ君。
盛大に溜息を吐かれた。
失礼な。
「……蝶ちゃん、ちょっと俺、今自分で中也さんに連絡して話す事にする」
『は、はあ…』
すぐに携帯を取り出して電話をかけ始めるカルマ君をぽかんと眺めていれば、通話が開始される音が聞こえた。
「あ、もしもし中也さん?あのさ、お宅の蝶ちゃん、一体どんな教育してるわけ?」
『ちょっ、それどういう事カルマ君!?』
電話での第一声がそれって!!
思わず口を挟めば中也さんの気の抜けたような声が聞こえた。
「はあ?いきなりどうしたんだよ、何かあったのかと思って出てみれば蝶の教育とか…」
「いや、うん。落ち着いて、怒らないで聞いてね中也さん」
カルマ君は自分が私に防御術を教わりたいと頼んだ事、そして南の島へ行くまでの間お泊まりでしないかと提案した事を伝える。
「なっ!?手前親がいねえようなところに蝶を!!?」
「だから落ち着いてって。それで、蝶ちゃん簡単に二つ返事でうんって言っちゃってるんだけどさ、流石にこの子が心配になってきたから中也さんもこっち来ない?」
「『はっ?』」
端末からの中也さんの声と私の声が重なる。
中也さんが…あれ、違う、中也さんと私がお邪魔しに行く?
「なんかもうね、危機感も自覚も無さ過ぎて怖いし、何をどこまで教えればいいのか分かんないから中也さんきてくれないかなって」
「…悪いが暫く俺は横浜を離れられねえんだ。だがまあ蝶を一人でやるのも確かに危なっかしい……ああ、そうだ。カルマ、手前がこっちに来い」