第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
『一応先に言っておきますが、前に烏間先生と話していた通り、私は皆の手で殺すのが一番だと考えてます。なので、もし今回の作戦が失敗したとしても、私はとどめは刺しません』
烏間先生と相談して私がとどめをまだ刺すことはしないと決めている事は、カルマ君も知っている。
「…少し惜しい気はするが、分かっている。協力してくれるだけでも有難い」
『烏間先生にもお世話になりっぱなしですからね。じゃあ、私とカルマ君もこの辺で帰ります、また明日からよろしくお願いします』
「あ、覚えてたんだ蝶ちゃん。外で話すの?烏間先生さよなら〜」
「あ、ああ」
烏間先生を教室に残して分厚い分厚いしおりを片手で筋トレと言わんばかりに持ち上げて、カルマ君と話をするため外に出た。
『烏間先生の前じゃ話しにくかったんでしょう?ここなら話せる?』
移動したのは、烏間先生が普段通らない方向の山の中。
「うん、まあそんな大した話じゃないかもなんだけど」
少し間を置いて、覚悟を決めたように私の目を見てカルマ君は言った。
「…俺、烏間先生の防御術を身に付けてる最中なんだけど、夏休み中に見てもらえないかな。色々と意見が欲しいし、出来ることなら蝶ちゃんが習得してる防御術も教えて欲しい。訓練じゃ教えてる暇ないだろうし、それに俺もあんま人に見られたくないし」
『防御術?殺しの技術には二の次で大丈夫なはずだけど、なんでいきなり?』
不思議に思って聞けば、鷹岡が学校に来た時、中也さんが皆に話したという話を教えてもらった。
カルマ君はそれを人伝いで聞いただけだったらしいけど、その言葉に心打たれたそうだ。
『成程、カルマ君格闘術得意だし習得してれば確かに心強いね。ただ、教えるにしてもいつ教えよっか?家の都合もあるだろうし、あんまり遅くまでは…』
言いかけたところで、カルマ君に遮られる。
「ああ、それなら俺の家に来てもらえない?南の島に行くまでの間でいいからさ、泊まりで」
『……お泊まり?』
悪気なんてないような爽やかな笑顔の彼に聞き返せば、両親はインドかぶれで海外旅行に行っていて、実質一人暮らしのようなものなのだと教えてくれた。
「部屋余裕で余ってるし、防御術以外にも教えて欲しい事あるし」
『…そうだね、明日からでいい?中也さんと話つけてくるから』
行くのはいいけどあの人をどう説得しようか…