第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
『それにしても、何でここで私なんですか烏間先生?別に私にそんなに頼まなくたって、烏間先生でもう十分に訓練は進んでいってるのに』
「実は、もう皆には話したんだが、夏休み中の特別講師としてロヴロさんを呼んでいる」
『え、それなら』
ロヴロさんが講師になるんなら、私本当に出る幕ないんじゃ…
なんて思っていれば、烏間先生が全て話してくれた。
「そのロヴロさんが仰ったんだ。もっと身近に、自分なんかよりもよっぽど腕の立つ人物がそこにはいるだろうと」
ロヴロさんだって十分に強い。
現役を引退されていたって、彼に敵うような人物、早々いないはず。
「俺などのような者の名前ではなく、あの人はすぐに君の名前を出した。プロの暗殺者の視点から見ても、白石さん程に適任な人材はいないとの事だ」
烏間先生は曖昧な言い回しをしてくれたが、それはつまり、ロヴロさんが殺しの面において、私なんかを自分よりも評価しているということ。
たった一度同じ任務に就いてすれ違った程度で、どうしてそこまで断言出来る?
それも四年も五年も前の、もっともっと私が小さい頃に。
『…何でそんなに持ち上げられているのか私には分かりませんが、ロヴロさんがそう仰ったのならそれに恥じないくらいしっかりしないとですね』
「そんなに気を張らなくても大丈夫だ。改めて、これからよろしく」
『!はい、よろしくお願いします……では早速その黒板に書かれたいくつかの案なんですけど、一つだけ良いですか?』
首を傾げる皆の横を通って、烏間先生の向かいに立つ。
そして黒板に書かれているそれぞれの案を指さしながら、一つだけ提案をした。
『これ、ここに出てる案、全部使っちゃえばいいと思います』
「ぜ、全部!?」
「ええ!?」
どよめきが聞こえる上に烏間先生もこちらを見て少し驚いている。
『どれか一つにこだわる必要ないでしょ?それなら、徹底的に殺せんせーを弱らせるために、ありったけの暗殺を仕掛ければいい…決定的なとどめを刺すその時まで、全力で弱らせて、困惑させて……あとは殺せんせーを揺するネタでもあれば最高かな』
ここに来て一番の笑顔を皆に向ける。
あの先生にはそれが一番動揺させられるから。
「蝶ちゃん恐ろしい暗殺方法教えるねぇ」
『私は何にも教えてないよ。ちょっと視野を広くしただけ』
「絶対敵に回したくねぇ…」