第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
『ポートマフィアの幹部で荒事ばっかりだけど、根本的な部分は国木田さんや谷崎さんにそっくりですよ。私も親バカって言ってます』
プッ、と社長以外が吹き出す声が聞こえた。
「あの顔と強さで親馬鹿とか、流石の僕でも想像つかないんだけど」
「いやいや乱歩さん、見ただろう?あの焦りようといい、心配具合といい、蝶の事好きすぎだろうあの男」
クスクスと聞こえる声に私もクスリとした。
しかし次の瞬間、乱歩さんの発言で私の顔から笑みが消える。
「だってあの人の感じ見てたらさあ、親馬鹿って言うより、もう蝶ちゃんと本当にただの恋人にしか見えなかったじゃない?」
『え…っ、乱歩さん、何でそんな事……』
本当に超推理という異能力があるのではないかと思う程に、この人の言う事は全てが事実。
眼鏡をかけたままの乱歩さんだから、余計に彼の視線がそうなんじゃないのかと訴えかけてくる。
「まあ少なくとも、軽く蝶ちゃんが想像出来ないくらいにはあの人、蝶ちゃんの事大好きだよ」
「ほう、そんなにかい。人前じゃあそういう素振りはかなり隠してたみたいだけどねえ?」
「どう見ても恥ずかしかっただけですよあれは!すっごい僕に敵意剥き出しにしてましたし!」
年上三人の思考についていけなくて、前に中也さんも言っていたような乱歩さんの言葉だけが頭の中をグルグルと回った。
私が想像出来ないくらいには私の事が好き……それもそんなレベルは軽く通り越しているほどに……?
『…そんなに好きなら、もっと言ってくれればいいのに』
ポツリと呟いた言葉は、皆の耳にも届いていた。
「まあまあ、あの男の気持ちも汲み取ってやりなよ。あんたの前じゃカッコつけたいんだろ」
「自分は大人だからーとか考えてそうですよねあの人」
「かなり我慢してると見えるね」
私の前でカッコつけたい、それは前にも分かっていた。
けど、想像もしていなかった言葉がぽんぽんと流れてくる。
『大人だから?我慢…?』
「その辺は彼にまた直接聞いてみればいい。最初は言うの渋るだろうけど、何だかんだ蝶ちゃんには逆らえないだろうからね!」
乱歩さんの言葉に目をぱちくりさせれば、これ以上は皆教えないよ、と頭を撫でられた。
そして社長が咳払いをして、私から背を向ける。
「……ポートマフィアの人間にも、面接と試験は課す。何かあったら連れてきなさい」