第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
あれから暫くして、まだ仕事があるからと、仕方なくといったように中也さんは私から離れた。
中也さんが名残惜しそうにするだなんて珍しい事だけど、胸が締め付けられる程に嬉しかった。
そして、最後に“Qが牢から出されてる、呪いの痣が出来てねえか、横浜にいるうちは確認しとけ”と伝えられ、中也さんは少し顔を曇らせて戻っていった。
Qちゃんの呪いは、かけられてしまったとしても、私なら自分の能力で解除できる。
それを信じて仕事に戻ってくれたのが、私には何よりも嬉しかった。
しかし嬉しさに浸っていて、ある事に気が付く。
『……外套、私が持ってていいのかなこれ』
中也さんの外套を羽織ったまま探偵社の拠点に入ると、社長と乱歩さん、与謝野先生と賢治さんが集まっていた。
「!蝶、やっと帰ってきたのかい。あの男に何もされてないか?」
『う、ん…』
とても言えないような事ばかりしていたけど、私にとっては嬉しい事ばかりだったので、中也さんの外套をキュッと握って答えた。
多分、乱歩さんにはバレている。
『…あ、あの。太宰さんから何か、聞いてますか』
「太宰から?ああ、あいつが元ポートマフィアの幹部だったって事かい」
賢治さんもそれは知っているようで、やはり私も話さなければならないなと腹を括る。
中々言おうとしても言い出せない私に、与謝野先生から話しかけてくれた。
「太宰から聞いた時点で、あんたが元ポートマフィアだったなんて事分かってたさ。前職が一緒で、しかもあんたがここに来た日、太宰を頼りにここに来たんだろう?相当親しい間柄だった事くらいわかるよ」
『!…怒らないんですか?私、敵組織の幹部を庇うような真似をしたんですよ?』
「よい。探偵社員が攻撃を受けかけた時も、身を呈して庇おうとしていただろう」
社長の言葉で、危うく中也さんの攻撃を受けそうになったのを思い出し、また外套を握る手に力が入る。
「……ごめんね蝶ちゃん。僕、君が入れば大丈夫になるって分かってて、君を呼んだんだ」
今度は乱歩さんがこちらに歩いてきて、再び謝罪の言葉を述べる。
『いえ、大丈夫です…おかげで、こんな時間から中也さんにも会えましたから!』
照れくさかったけどそう言って笑うと、皆呆れたように笑ってくれた。
「それにしても相手は中原中也かい…こりゃ親馬鹿三人が聞けば卒倒もんだねぇ」