第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
扉からテレポートしてきたため、一瞬で入り込む事が出来たものの、中也さんはもう足に勢いをつけ始めていて、自力では止められないようなところまで振り出されていた。
曲げられていた足が伸びてくるのが、スローモーションのようにゆっくりと見える。
『…っ、ん……!』
足が当たるのを…中也さんに蹴られるのを、覚悟した。
壁を使ったって中也さんになら砕かれる。
与謝野先生を移動させたって、中也さん自身を移動させたって、すぐに対処してあの人なら攻撃する事が出来てしまう。
異能を使っている中也さんになら、すぐにそんな事が出来てしまう。
そして何より、中也さんに攻撃なんて、私にはとても出来っこない。
「…!馬鹿、避けろ!!!」
私だと認識したのか、中也さんの声が大きく響く。
だけど動けない、足が、思考が、動いてくれない。
異能付きの中也さんの蹴りの衝撃を覚悟して、目をギュッと瞑って身体を力ませた。
『____きゃ……っ!!』
しかし私を襲ったのは、中也さんの蹴りの痛みではなく、目では認識することの出来ない強い力だった。
何故か、中也さんの足に向けて強く、思いっきり身体が引っ張られる。
「くっ……」
中也さんの呻き声が一瞬聞こえて、かと思えば彼の両手で両肩を抑えられ、身体がよろめくのが支えられた。
『…ぁ、れ…、…!?』
痛みが来なかったこと、そして中也さんに支えられたことに驚いて恐る恐る彼を見る。
しかし、彼の振りかざした足を見て、血が垂れているのが目に入る。
頭が真っ白になった。
中也さんが、また私のせいで血を流している。
『あ、…足……それっ…』
何も考えられなくて、言葉がちゃんと紡げない。
そんな私の肩を掴む手に力を込めて、一息吸ってから中也さんが口を開いた。
「……っの、馬鹿野郎!!なんでそこに入ってきた!お前、俺が足を止めなかったらどうするつもりだった!!!」
『!!わ、たし……っ』
中也さんの足から垂れる血から目が離せなくて、元々見るのも怖い血液が目にこびり付く。
私がまた、やってしまった。
私がまた、中也さんに怪我をさせてしまった。
「俺が異能で無理矢理止めなかったら…っ、お前は!!俺にお前を蹴らせるつもりだったのか!!?」
中也さんの怒鳴り声が響き渡って、それが怖かったからなのか自分の後悔からか、涙がポロポロと溢れ出した。