第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
南の島に行くのまでもう一週間もない…となると、それまでの間に組合との件に決着がつかなければ、最悪南の島と横浜の両方に気を張っていなければならないということ。
能力があるから距離は離れていても問題ないのだが、普段と状況が違う時というのは何かを起こしやすい時。
つまり、何かが起こるかもしれない時。
「蝶ちゃん、ちょっと話あるんだけどいい?」
考え込んでいたら、カルマ君から話しかけられた。
『うん、分かった。校舎でいいんだよね………!』
了承したばかりなのにも関わらず、私の携帯に着信が入る。
「…出なくていいの」
『で、出る…廊下行ってくるね』
探偵社の方にも何かが起こる、もしくは起こっている。
着信を見ると、与謝野先生からのもの。
悪い予感しかしなくて意を決して通話を開始すれば、聞こえた声は与謝野先生のものではなくて、乱歩さんの声だった。
「もしもし蝶ちゃん!今学校?ちょっと拠点に敵が侵入してきて、罠が全て突破されてしまったんだけど」
『乱歩さん!?それに罠が突破されたって…!』
拠点に戦力をぶつけられるとディフェンスがもたない。
探偵社にとっては痛い仕打ちだ。
「恐らく異能力持ちの手練…一人で乗り込んできている。生きてる奴が出てこいって事で与謝野さんと賢治君が相手のところに向かおうとしてるんだけど」
『与謝野先生が前線に!?敵の目的は?』
「見たところこちら側の殲滅でないことは確かだ。けど、与謝野さんに何かあったら探偵社は崩れるだろう。与謝野さんのところに行けるかい?一応監視カメラで見てはいるんだけど」
今回の作戦の要は、なんといっても与謝野先生を守ることにある。
乱歩さんは一般人だし、社長を前線に駆り出すわけにもいかないし、賢治さんだって一人でやれる事には限界がある。
『分かりました、与謝野先生のところですね!すぐにそっち行きます!』
「うん……ごめんね」
乱歩さんはそう言って、一方的に電話を切ってしまった。
最後のごめんねは、私に頼むことになってしまったからなのだろうか。
何にしても乱歩さんが謝罪の言葉を口にするだなんて普通じゃありえない事だから、今回は本当に不測の事態と推測した。
『ごめんカルマ君!話、もし今日学校で待てるなら、私が戻るまで待っててもらっていい!?』
「分かった、教室にいるよ」
『ありがとう!!』