第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
磯貝君が殺せんせーに向かって、その事なんですが…と言いかけたところで、烏間先生が大きな音を立てて教室に入ってきた。
「白石さん!まだここにいるか!?」
『え、私…?』
「ああ、いてくれたか!ニュースが更新されたんだが、知らせた方がいいかもしれないと思って…職員室に来てくれ」
『は、はい!』
烏間先生の焦りように何事かと思って、私だけでなく皆にも動揺が広まる。
ニュースが更新されたってことは、私がここにいた間に何かが起こったということ。
烏間先生が焦っているということは…横浜の記事だっていうこと。
烏間先生にパソコンの画面を見せられ、そこに書かれた記事を読む。
『横浜…豪華客船 ゼルダ号、爆破……?』
「ああ、つい先程の事だったそうだ。君に何か関係があることなのかと思ってな」
『……組合の拠点!!』
考えつくのはそれだけ。
それならば、私に何も連絡が来ていないことも、芥川さんが医務室で首領に何か依頼を受けていた事にも納得がいく。
敵船爆破…恐らく首領の計算通りの事。
そしてそれは積荷を補充している最中を狙ったものだろう。
敵の構成員も、恐らく相当な深手を負っているはず。
『爆破なら梶井さんがいる、芥川さんが殲滅任務に当たってたなら、筋が通る…』
「探偵社の方に何か不利益な事はないのか?」
『今のところは。でも首領が組合に手を加えたんなら、何かを仕掛ける合図なのかと…今日何かあったら私横浜に行きます。終業式はどうなるか分かりませんが、しおりはちゃんともらいにきますから』
「了解した。無理はするな」
組合の拠点が爆破されたなら、組合もまた何か動き出すかもしれない。
けど、一気に優劣が変わって、暫く組合は横浜で拠点を再成しなければならないだろう。
教室に戻れば、磯貝君が話を終えていた。
A組との賭けに勝ったため、夏休みに南の島に行って行う椚ヶ丘中学校特別夏季講習の参加券を、E組が貰い受ける事。
そして、その島に行った時に、大規模な暗殺計画と共に殺せんせーの触手を破壊する権限を使うこと。
『……うん、手伝えるところは出来るだけ手伝う。けど、私南の島でずっといれるか分からないから、作戦を実行する頭数には入れていない方がいい。それだけよろしく』
烏間先生に呼ばれた後の曇った様子の私を見てか、皆の表情もどことなく暗かった。