第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
翌日、探偵社の事務所に行くと、そこには誰もいなかった。
パソコンやいくつかの資料もなくなっているが、荒らされたような形跡はなく、ただこの様子を見たら連絡をしてきてくれという書き置きがあるだけ。
携帯に連絡してくれればよかったのにと思いつつも、恐らくこれを書き留めたであろう太宰さんに電話をかける。
「もしもし、蝶ちゃん?いやあ悪いね、昨日の夕方頃から拠点を移すことになったのだけれど、君は恐らく中也といた方が安全だろうと思ったから、昨日は伝えていなかったのだよ」
『拠点を…?』
本格的に三つの異能組織の戦争が始まるという事で、社長がまずは拠点を隠匿するために、旧番香堂という以前探偵社が設立される前に拠点としていた場所へ移動したらしい。
それで、太宰さんから探偵社の作戦を伝えられる。
「組合は資金力、ポートマフィアは言わずもがな、頭数が多い上に戦力もある。だから…『奇襲作戦で姑息に勝ちを取りに行く』流石」
拠点に与謝野先生と社長と乱歩さん、賢治さんを配置し、拠点とともに与謝野先生を守る。
あの人がいる限り、何度でも誰でも、死なない限りは全開できる。
『オフェンスはどうするんです?』
「二つに分けた。国木田君と谷崎君のペアと、私と敦君のペアだ。そして蝶ちゃん、君なのだが…何か緊急の事態が怒った時に、すぐに君には連絡がいくよう皆に伝えてある。携帯が鳴ったらいつでも動けるよう心構えだけしておいてくれ」
『成程、わかりました…けど太宰さん、私は恐らく、何もない限りはその拠点には行かない方がいいと思います』
隠匿するべき拠点には与謝野先生がいて、そこは死んでも死守しなければいけないところなのだが、だからこそ何も無い時には不用意に近づくべきではない。
「何故だい?いれるときには君がいてくれると、物凄く心強いのだけれど」
『…中也さんにこの前、指環治してもらったんです。置いていけばいいだけなんでしょうけど、やっぱりないと心配ですし……このまま私がそっちに行けば、ポートマフィアに探知されるかもしれません』
「成程…でも蝶ちゃん、君も薄々感じてはいるだろうが、森さんはそんな事をしなくてもすぐに拠点を見つけるよ」
これは、恐らくすぐに私が駆り出されることになるだろうから出れるようにしていてくれという事だ。
『……覚悟はしてます、大丈夫です』
「うん、有難う」