第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
『………私が言っても言わなくっても、探偵社は黒い事はしません』
私が太宰さんにお願いしたって事がバレてしまっていたのがなんだか格好つかなくて、可愛げもなく拗ねたように言った。
「太宰の野郎がいるからそれは分かんなかっただろ、お前のおかげだよ。後、お前が探偵社の意向に沿って姐さんをそっちに置いておくことに反対出来ねえのも分かってっから、その辺も気にすんな」
私に何も考えさせないで良いようにと、変に今日は行動的だったのか。
何であんな方法を、と思いもしたが、それは単に彼の言った通り、本当に自分がそうして楽しみたかっただけなのだろう。
『首領も中也さんも本当過保護…でも嬉しい』
「おう、それなら過保護な甲斐があるってもんだ。……って、過保護じゃねえよ!!」
認めたはずなのにすぐに否定された。
ノリツッコミだなんていうものではなくて、単に間違えただけなのだろう。
必死すぎて今度は相手の余裕が少しなくなっている。
『過保護じゃなかったらなんなんですか、親バカ中也さん』
「だから親バカって!!俺も首領も、お前には頭が上がらねえってだけだよ!ほら、とっとと食器片すぞ」
言うのが照れくさいのか、少々回りくどい言い方をされた。
そしてすぐに私から腕が離されたのだけれど、相手からこうされて持病が発病してきているのに、また相手に離されるだなんて嫌だって、わがままな思考が生まれる。
『……もう中也さんと離れるの?』
椅子に座った中也さんよりも少しだけ目線が高いため、私が上から中也さんを見つめる形になる。
呆然としているけれど相変わらず綺麗なその顔に捕えられたような錯覚に陥ってしまうほどに、中也さんから目が離せない。
離れたく、ない。
「本当、これでわざとじゃねえのがお前らしい。ちょっと間だけだぞ、どうせまた後で時間はあんだから」
中也さんに再び腕を回されて、いきなりだった為に少しビクついたけれども、すぐに今度は私からも腕を回し返した。
『えへへ、今日中也さんいつもより優しい気がする…今の内にいっぱいいっぱい甘えておくの』
「そうかよ、んじゃお前の言う事聞いてやらねえといけねえな。俺はお前には逆らえねえらしいから」
私には逆らえない…中也さんも私と同じように思ってる。
それだけでももう胸が満たされる。
『中也さんと一緒だ』
「阿呆、俺の方がそうだっつの」