第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
『なっ…に、それっ………』
羞恥に耐えられなくなって、中也さんの胸元に顔を埋める。
腕を回す余裕すらなくなって顔を隠していれば、中也さんからよしよしと宥められる。
「まあ今でも十分可愛らしいのに変わりはねえがな」
『そんな事ない、から…っ』
他の人から言われる可愛いと、この人に言われる可愛いとじゃ、私の中では全然意味が変わってくるものだ。
お世辞…なんてこの人は言わないし、かと言って首領や敦さんみたいに小さい子供相手に可愛いなと思うような雰囲気のものでもない。
私の事が大好きなんだろうなとは思うものの、やっぱりその好きは私の望むものであるわけがないので、中也さんの言う好きが想像も出来ないほどに深いものなのかもしれないと勝手に自己解釈をする事にする。
「わざとやってんじゃねえだろうなってくらいにそう思うが、まあお前じゃ恥ずかしくてんな事出来っこねえって分かってるからな。だからこそ余計にこうしときたくなるわけなんだが」
『……中也さん今日どうしたの?帰ってきてすぐなのに、なんで今日そんなに私の事いっぱいいっぱいにさせちゃうの?』
単純に、疑問に思った。
普段、彼の方から食べさせるだなんてこと滅多にない。
その上私にそうやって甘い台詞ばかりを投げかけて、私の余裕がなくなることを分かっててそれをするんだ、この人は。
余裕が無いなんていつもの事。
それでも、こんな風にご飯の時からそこまでされた事なんてない。
何か私が思いつめてる時や、髪を乾かしてもらう時、そして寝る時くらいにしか、中也さんは私をこんな風に扱わなかったはずなのに。
「…お前が余計な事考えねえようにだよ。後俺がこうしたかっただけだ」
『結局楽しんでるんじゃ…余計な事って?』
「紅葉の姐さんの事や探偵社の事だよ。一応言っとくが、俺や首領の意見としては、お前に何かを頼んで探偵社を裏切らせるような真似はさせねえつもりだから安心しろ」
『!…私、そんなところ心配してないよ。首領も中也さんも、そんな事させないって分かってる、心配してない』
相手の方から言われるとは思わなかったけれど、言ってもらえてやはり安心もしている。
中也さんは、きっとそうなる事が分かってて言ったんだ。
「姐さんの件については太宰の野郎から首領に連絡があったらしくてな。お前に頼まれたから、捕虜と言ってもちゃんと扱うそうだ」