第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
事務室の方に戻れば、入ってきた敦さんと私に気が付いた国木田さんがこちらに来る。
「白石!すまない、情けないところを…感謝する」
『いえいえ、私は運んだだけですから。お礼なら与謝野先生と…太宰さんに』
私を駆り出すつもりはなかったと悔やんでいる国木田さんも、やはり私は学校の方を優先した方がいいという考えのようだった。
「そう言えば、捕らえた捕虜はどうなっているんだ?」
「え、ああ…そういえば、後は太宰さんが自分に任せろって」
『……捕らえた女性は、ポートマフィアの五大幹部の一角を担う人物だから、自分がポートマフィアの作戦を聞き出すって言ってましたよ。あの人に任せておけば大丈夫です』
太宰さんが元ポートマフィアだと知っていると私が感じたのはまだ敦さんだけだから、国木田さんにはまだ伏せている。
太宰さんに話さずに勝手に話していいようなものでもないだろうし。
敦さんは私がそこを避けているのにも、国木田さんがそれを知らないのにも気付いていないのか、真剣に話を聞いている。
『絶対に何か…いや、あらゆる情報を聞き出して戻ってきますから』
「まあ、前職が同じだった白石が言うのであればそうなのか…ところで白石、学校には戻らなくて大丈夫なのか?もうかなり時間は経っていると思うが…」
「あ、本当だ!もうすぐ夕方になる」
国木田さんと敦さんに言われてハッとした。
『あ…あああ!愛妻弁当置きっぱなしだ!!すぐ行って食べなきゃ夜ご飯食べれなくなっちゃう…国木田さん、敦さん、私今日はもう学校行ってから帰宅しますね!?お疲れ様です、また何かあったら連絡入れてください!!』
「あ、ああ勿論連……おいまて白石、愛妻弁当とはどういう事だ!!?」
『愛妻弁当は愛妻弁当です!私が心を込めて作った……も、もも戻りますから!!』
「待て、逃げるな!!」
国木田さんがお父さんモードに入りかけていたため、すぐに扉を作って中に入る。
『わ、私の花……いや、召使い修行なんです!』
「花嫁修業じゃないの!?」
扉から顔だけ覗かせれば敦さんの突っ込みが入った。
花嫁修業がいいけど、あの人と結婚なんて、籍があってもなくてもどの道出来ないだろう。
中也さんが私みたいな子供に、本気になってはくれないだろうから。
『それでいいんです…じゃっ』
唖然とする二人を置いて、椚ヶ丘へと戻った。