第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
「彼女は私に任せたまえ」
太宰さんが中島さんの腕を掴んで異能力を無効化し、中島さんは素っ頓狂な声をあげる。
『……太宰さん?』
痛みを覚悟していて、紅葉さんに背を向けた状態で目を瞑っていただけに、私も間抜けな声を出す。
そして、段々と後ろの人物の感情が気配として私に伝わるようになってきた。
「その声にその髪…その姿!成長はしておるがまさか、蝶か!?」
『!…はいっ、お久しぶりです!』
久しぶりなのに、もう私は武装探偵の人間なのに、首領や芥川さん、広津さんに銀さん、そして中也さんと変わらぬ様子で接してくれる紅葉さんに涙が出そうになった。
振り向いて紅葉さんの傍に駆け寄ると、紅葉さんは上体を起こして私を抱きしめる。
「其方の生存を知らされた時…いや、其方が消えた時からずっと、会いたかった。よく生きていてくれた、よく横浜に帰ってきてくれた!よく、また私の前に来てくれた…!」
紅葉さんは強い人だが、感情豊かな人だ。
今だって、私に会ったなんていう事だけでも涙声になっている。
『すみません、お仕事で忙しいって聞いていたので……』
もらい泣きしてしまいそうだ、なんて溢れる気持ちを抑えていると、太宰さんが口を開く。
「蝶ちゃん、すまないけれど再会はとりあえずその辺で。大丈夫、君との約束はちゃんと守るから…姐さん、話が終わったらちゃんとまた蝶ちゃんと会えるから、今だけ我慢してくれ」
『あ…はい。絶対、約束守ってくださいよ。紅葉さんごめんなさい、私今武装探偵社でお世話になってるので…紅葉さんの事を捕らえるような事、したくないのですが』
紅葉さんは私の肩に手を置いて、じっ、と目を見て言う。
「そのような事は善い、全て彼奴から聞いておる。どんな形であれ蝶と会えただけでも奇跡のようなものなんじゃ…今は学校にも通っておるのだろう?私もそれでよかったと思うておる。主はそのような事を気にせず、今の生活を楽しめば善いのじゃ」
『……うん、また次の機会にいっぱい話しましょ!いっぱい話したい事、あるの!』
「!そうかそうか、楽しみにしておるぞ!」
私の頭をよしよしとして、紅葉さんに手を離されてから中島さんと一緒に仮眠室を後にする。
太宰さんに目でちゃんとあいずちをとってから出れば、中島さんが私に口を開いた。
「本当に、蝶ちゃんもポートマフィアだったんだ」