第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
「と、ほら蝶ちゃん。あいつに教えてもらった事、ちゃんとしなきゃいけないんじゃないのかい?私としては全然いいとは思うけれど、敦君にも悪気は無かったのだから」
『………ごめんなさい中島さん。次から気を付けます』
「えっ!?そ、そんな!僕の方こそ嫌な事言って…ごめん」
中也さんに教えてもらった、人としてのちゃんとした礼儀。
まず教えてもらったのが、ごめんなさいの謝罪の言葉。
人と仲直りをする時に、自分が悪いことをしてしまった時に、意地を張らずにちゃんと言わなくちゃいけないと教わった。
「うん、これならお相子だね。それにしても本当、蝶ちゃんはしっかりしたいい子に育っているものだけれど…それの大半があいつの教育の賜物だってのが気に食わないねえ」
私の事を褒めてくれる太宰さんの言葉に中島さんが反応して、“あいつ”と呼ばれる人物の事が気になったようにあいつ?教育?と声を漏らしている。
『私の大好きな人の事。私を助け出して育ててくれて、強くしてくれた…大好きな大好きな人の事』
中也さんの顔を思い出してふと口が緩む。
心が暖かくなる。
「まあ、彼女の育ての親のようなものさ。親と言っても私と年は変わらないけれど」
「育ての親?助け出して強くしたって…」
『中島さんにはまだ話してませんでしたね。私、親というものがいないんです。そして戸籍が…この世界のどこにも、生きてる証が、ないんです』
この事については、探偵社の皆が知っている事。
私が学校に通っていない理由を説明する際に、ちゃんと皆に話をした。
「!親だけじゃなくて、戸籍まで…?」
『…まあ色々あって。それでその上こんな妙な能力や体質まで持ってるものだから、ちょっと監禁されてたりしてたんです』
監禁と聞いて顔を青ざめる中島さん。
まだ大丈夫だ、まだ、詳しい事は隠してる。
「それでそんなところから彼女を救い出して、育ててきたのがそのあいつだよ。蝶ちゃんの御目付け役さ、前に話した事があったろう?」
私が芥川さんと再開した日に、国木田さんに説明するのと同じように中島さんにも説明したと太宰さんは言う。
『国木田さんになんであの人の話を…?』
「え、…ああ、確か君が無茶ばかりしているから、見兼ねた国木田君が前の職場が同じだった私に聞いてきたのだよ。以前からこんな風に無茶ばかりするような子だったのかって」