第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
中島さんは、流石に私が殺しなんてするような人間には見えなかったのか、目を見開いて冷や汗を流している。
「蝶ちゃんが元殺し屋…?ポートマフィアって、あんな非道な事ばかりをするような組織に何で君のような子がっ……!?」
仕方の無い事、これが普通の反応。
だけど私は、マフィアの事を何も知らないで…中也さんの事までもを貶すような発言を、聞き逃すだなんてこと出来ない。
殺すつもりなんてない、殺しはもうやめたから。
だけど、二度とそんな事を言われないよう…私は中島さんに殺気を飛ばす。
「…蝶ちゃん、やめてあげなさい。君も分かっているのだろう?敦君に悪気はないよ」
『すみません、これでもかなり抑えるようにしてるんですが』
太宰さんに宥められるけれど、抑えられるはずなんてない。
私からしてみれば、探偵社の皆と変わらない位に暖かいあの場所が、私の帰る場所だったんだ。
皆が、中也さんが、私の家族だったんだ。
……己の貫く正義の為にと、死んでいった人だっているんだ。
「こ、これは…っ、いったい……」
「はぁ…敦君、私の前でならともかく、蝶ちゃんの前ではポートマフィアの事をあまり悪く言わない方がいい。この子は確かにもう殺しをやめてはいるけれど、この子の才能…そして実力は本物だ」
『太宰さん、過大評価しすぎです。それに中島さんに手を出すわけがないでしょう』
実際のところは体が動かないよう、手が出ないよう、即座に判断して壁で無理矢理身体を動かせないよう固定をしている。
咄嗟の判断がなければ今頃、中島さんの首に手をかけていたっておかしくはなかった。
「で、でも蝶ちゃんがこんな殺気を出したところなんて、今まで見た事…」
「そりゃあなかっただろう。なんせ今の今まで、私の事を考えてか誰にも元マフィアだなんて言っていなかったのだから。…ほら蝶ちゃん、そろそろ落ち着いて。君の事なら私がよく分かっているから」
太宰さんに頭を撫でられて、胸のざわめきが少しずつ落ち着いていく。
もう隠す必要がなくなってしまったからか、ついついかっとなってしまったのだろうか。
…頭撫でられるの好きって、落ち着くって、太宰さんは知ってたのかな。
『本当、よく知ってる…誰かに聞いたの?』
誰とは言わないけれど、私の言わんとすることは太宰さんになら伝わるだろう。
「悔しい事にその通り、あいつだよ」