第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
「それにね、蝶ちゃん。君はここの皆を仲間だと言うが、椚ヶ丘の皆も同じように仲間だと思っているのだろう?そっちに組合の輩が行ったら、それこそ君にしか守れないんだ。そういう意味でも、重要な役を頼んでいるんだよ君には」
そうだ、あっちにだって、いつトウェインさん以外の人が現れるか分からない。
あの人だって、そろそろ独断で私を見逃すような真似はできなくなるだろう。
『……はい』
「うん、いい子いい子!じゃあ早速仮眠室へ行こう。姐さんの元に」
『!紅葉さんの事捕虜にするって、太宰さん…っ』
紅葉さんの事を思い出して、太宰さんに勢いよく振り向いた。
『敵対組織…だけど、あの……あんまり酷い事、しないであげて?』
太宰さんなら、やろうと思えばいくらでも辛いことなんて出来てしまうだろうから。
拷問までとはいかずとも、きっと情報を聞き出す為に手段は選ばないはずだから。
「酷い事って…付き合い長いだけあってよく分かってるね蝶ちゃん。そんなに可愛くお願いされちゃあ仕方ない、善処しよう」
『怒らないんですか?』
笑顔を浮かべる太宰さんに、面と向かって聞いた。
私は、敵組織の幹部を庇うような事を言っているのだ。
「私が怒れるわけがないだろう。君の事は、社の中じゃあ一番に理解しているつもりだし……こんなに可愛い蝶ちゃんに怒るだなんてこと、出来ないよ」
『か、からかわないで下さいよもう…ありがとう、太宰さん』
「うん、どういたしまして!ほら、お茶持って行って向こうで飲もう!蝶ちゃんも姐さんとはまだ会えてなかったんだろう?」
『!気付いてたんですか』
ポートマフィアに度々行く事になったとはいえ、紅葉さんは暫くお仕事続きで全く出くわす事なんてなかった。
「そりゃあね。蝶ちゃんが姐さんにおもちゃにされてないのなんて、恥ずかしがってないのをみるとよく分か『行きますよ』えっ、置いていかれるの私!?」
あの人も私の事着せ替え人形みたいにするんだよなぁ、と昔の黒歴史を頭の中から払拭し、ちゃんと湯呑みを持って移動する。
少し雑な扱いをしたのに、太宰さんはすぐに復活してレディーファーストだと言わんばかりのキメ顔で仮眠室の扉を開け、私を先に入れてくれる。
『…キメ顔しなかったら合格。それと中也さんならこれ日常』
「という事は不合格!?それに!!あ、あいつに負けただって!!?」