第2章 暗闇の中で
__ポートマフィア 拠点__
処刑場にて両手を鎖に繋がれている太宰は、とある人物と対面していた。
「……蝶に、何したって?」
「だ〜から、盗聴機能付きの発信機を持たせたんだって。」
「ああ!!?何だってそんなもん、!」
太宰の思惑通りに事は進んでいる。
彼が白石 蝶に持たせた無線機というのは、勿論通信機能も内蔵されている。
しかし、太宰の本来の目的はそこではなかった。
「さっきも言ったろう?君が敦君についての情報を提供してくれたお礼だって。」
「発信機を取り付けたって事の何が俺のメリットになんだよ!?俺は手前と違ってそんな変態的趣味はねぇんだ。」
「酷いなぁ〜……折角、探偵社員の目の届かないところで会えるよう、仕向けてあげるって言ってるのにさ?」
ようやく、相手は太宰の意図を理解したらしい。
「蝶ちゃんは、明日から京都で、中学校の修学旅行に行く。勿論探偵社員は仕事があるし、君が行ったところで誰も邪魔は出来ない。言ってる意味、分かるよねぇ?」
「…行けるわけねぇだろ、折角あいつが表の世界を歩もうとしてんだ。俺みたいな奴が今更あいつの前に出ていって、こっちの世界に引き戻しちまうのは嫌なんだよ。」
「へえ、君の割には結構考えてるんだ?でも、君には彼女に会いに行ってもらわなくちゃ困るんだよ。」
突然、おちゃらけたような雰囲気は抜け落ち、少し瞳が冷たくなる太宰。
「彼女を我々武装探偵社が保護したのは約半年前。しかし、その間彼女は君とは会っていないと言っていた…それどころか、君の事を考えすぎて、自虐的になりすぎている。非常に精神的に危険な状態なんだ。」
「んなもん、手前にだってあいつは懐いてんだし、なんとかなるんじゃねぇのかよ?」
「本っと、馬鹿だよね君?蝶ちゃんがご所望なのは君なんだよ。私でなんとかなるんだったら、わざわざ君なんかに頼まないさ。」
「悪かったな、俺なんかで。でも、行き先が京都だろ?今からで間に合うわけねぇだろ。」
「大丈夫さ。ポートマフィアの移動手段なんて沢山あるだろう?」
「…………今回ばかりは、手前の言うことを聞いてやる。ありがたく思え。」
「素直じゃないなぁ、もう。」
「何がだ、うるせぇよ。」
「全く……絶対に会ってきておくれよ?」
「当たりめぇだ。」
無線機を手に、一人の男は動き出した。
「__行ってらっしゃい。」