第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
「本当にすまなかった!!」
『だからもういいですって、吸ったのは中也さんじゃないんですし、もう昨日の服は洗濯もしたから大丈夫でしょう?』
中也さんが戻ってきてからずっとこんな調子で宥めているのだが、一向に終わる気配がない。
「中原君、君の件については蝶ちゃんもこう言っているし、いいじゃないか。それに、今はそっちよりも風邪気味なのが気になるよ僕は」
首領の言葉にギクリとする。
「聞けば蝶ちゃん、君…広津さん達と会った日の晩ずっと外で待機していたらしいね?それにプールに制服ごと入るはめになって全身濡れたまま自然乾燥に身を任せたり、一昨日だって何やら遅くまで学校に半袖のままいたとか」
『な、何で首領がそこまで知って…!まさか中也さんっ』
話を聞いていて、思い当たる節があった。
中也さんなら…この人なららプールでの件を知っていたっておかしくはない。
あの数日間、彼は東京の方で任務にあたっていたのだから。
「お、俺は別にっ!!」
「まあまあ蝶ちゃん落ち着いて。これは僕が中原君に頼んで聞いた事だから…少し前にあっただろう?東京の方での任務って。実はあれ、少し蝶ちゃんの学校の方で不穏な空気が感じられたから、中原君に様子を見に行ってもらっていたのだよ」
『!え、なら最初から、そうって言ってくれれば!!』
首領の言葉にまた中也さんの方を勢いよく振り向くと、何やら目を逸らされた。
「ふふ、中原君は蝶ちゃんの事が心配でたまらなかったらしいからね。それに可愛い女の子にそんな事、自分からじゃ言えないのが男ってものさ…じゃあとりあえず蝶ちゃんは、これから暫く無理したり身体を冷やしたりしないこと!いいね?」
「首領っ、そんな事!!?…っく、蝶、お前ちょっとでも調子が悪いと思ったらすぐに休め。探偵社でもここでも保健室でも、家でもいいから」
『…はい。薬飲まなくていいんなら大人しくします』
いい子だと言うように中也さんにまた撫でてもらえる。
私にはこれが一番いいしつけ方だ、それをこの人は無意識なのかよく分かってる。
「熱が出たら早退してでも帰ってこい。じゃねえと組合がどう動くかわからねえ以上、お前を一人にしておくのは余計に心配だ」
『分かってますって、中也さんは私がいないとダメですもんね?』
「おまっ…今日やっぱりここにいるか?」
『いや、学校行きますってば』