第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
「うん、軽く風邪の症状も出ているね。それが気管支の方に影響しているのだろう…と思うんだけど、中原君」
「はい」
「外套貸して」
私を診察していた首領だったが、何故か中也さんの方を調べ始める。
あれ、でも何で中也さんの外套?
中也さんも疑問に思った表情をしていたけれど、 すぐに外套を脱いで首領に差し出した。
「……やっぱり原因はこれじゃあないかな。中原君、昨日広津さんや梶井君と“行った”でしょう?久しぶりに」
行ったというのは、恐らく軽く飲みに行ったということ。
私の前じゃ絶対お酒なんて飲まないもんなこの人…
そこまで考えてふと思った。
昨日中也さんが後半のノリがおかしかったのって、もしかしてちょっとまだ酔いが残ってたのかな、なんて。
しかし冷静に中也さんが飲みに行ったのかと理解する私とは反対に、中也さんは顔を青くしていた。
「ま、まさか……っ」
「うん、いっぱい吸い込んでるね。昨日は服を洗う前によくくっつきでもしたのかい?多分気管支の方はそれだ、蝶ちゃんそのへん人より随分と身体が敏感らしいから」
『え、何…っ、ケホ、ケホッ……』
両手でまた暫く止まらなくなった咳をおさえようとしていると、ああまた、なんて言いながら首領が背中をさすってくれる。
「煙草の煙、浴びたままの格好で一緒にいたからじゃあないかな。蝶ちゃん自覚無さそうだけど、この子の身体は微かな臭いにさえこんな風に気管を反応させてしまうようだ」
「そこは盲点でした……っクソ!外套とりあえず執務室の方に持って行ってきます!!」
『え、中也さん!?』
中也さんは慌てて外套を首領から受け取り、物凄い速さで医務室から出て行ってしまった。
「……蝶ちゃん、君は昨日中原君とそんなにくっついていたのかい?あんなに気を遣っている彼が服に浴びた煙草の煙に気が付かないはずないだろうし、増してや君に近付いても大丈夫なようある程度工夫はしているはずだ」
『…私はいつでも中也さんとくっついてますよ。それにちゃんと分かってます…あの人、私の事心配し過ぎて煙草吸うのすぐにやめちゃったんでしょう?』
「おや、気付いていたのかい?」
『ふふ、あんな人ですから』
本来ならば依存性の高さから、そんな事は容易く出来るようなものじゃあないはずなのだけれど。
『中也さんの事なら、私にだってちゃんと分かりますよ』