第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
「お前それ、風邪か?熱は」
『ち、違うっ!!…と思う……ッ!ケホッ…』
咳が落ち着いて呼吸を整えるも、整えきれないうちにまた咳が出る。
余りにも咳が長引きすぎて呼吸もしんどくなってきて、顔が熱くなって生理的な涙も溜まる。
『ハッ…あ、ぁ……っ、ん、大丈夫。ありがと…』
「大丈夫って奴の反応じゃねえだろが。首領に診てもらった方がいいんじゃねえかそれ?風邪だとしてもそうでなくとも、調子が悪いのは確かなんだ」
『…学校』
意見を曲げない私に溜め息をつく。
そんな中也さんもかっこよくてついつい見てしまったのだけれど、またそれも咳によって阻まれた。
『ケホッ、…ッ!!……ぁ…っ、何、だろ?気管、支…かも』
「!お前が気管支の調子が悪いってんなら空気か…」
『アレルギーとか持ってないはず…ックシュ!』
「……どうする、学校行くにしても一応診察だけ受けておくか?原因が分からなけりゃ治らねえだろうし、何よりこれが風邪だと大変だ」
小さい頃からそうだった。
ちょっと私が目の前で咳の一つでもしようものなら、すぐに心配して、中也さんが一番に焦る。
『中也さん心配しすぎ…』
「心配するだろ、お前だぞ。自分の身体なんかよりよっぽど心配にもなるさ」
『!…もう、中也さん自身ももうちょっと心配して下さいよ………でも診察だけなら、受けないこともない…です』
小さく言ったのだが、それに本当か!?と目を輝かせて安心する中也さん。
やっぱり親バカ…でも、私だから心配になるんだという言葉が嬉しかったのもまた事実。
「んじゃ、とっとと髪もくくっちまおう。下ろしてんのもいいが、それだと余計な虫が付きかねねえ」
『む、虫って…何言ってんですか中也さん』
「お前が髪下ろしてるのを見るのは俺だけで良いんだよ。ほら、楽な姿勢でいいからちょっと首こっち傾けろ」
中也さんから、独占欲のような何かが働いているというのはなんとなく分かった。
『そんないいものでもないと思いますけど』
「俺からすればこれを見んのは俺の特権なんだよ」
『何それっ…でも結局これが好きじゃないですか』
いつもの定位置で結ばれる髪に、中也さんにそう言ってしまえば、また彼から返される。
「だってお前これ似合うんだからよ」
中也さんはやはり長い髪のサイドテールがお好きなようだ。
「よし、出来た。行くぞ」