第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
『中也さんの馬鹿、やっぱ馬鹿っ』
「でもしたかったんだろ?」
そうだけど、でもそうじゃなかったんだけど……でも結局そうなんだけど。
『馬鹿だもん…中也さんばっかり余裕そうで、私ばっかり恥ずかしいのっ、私ばっかり……!!中也さん…っ?』
思った事を言っただけだった。
なのに、それで悔しくて中也さんに馬鹿なんて言ってるのに、彼は私を優しく撫でる。
「…………好きだろ」
『!…こ、これより中也さんのがね!!』
苦し紛れに嘘にもならない事を口にしたが、すぐにまた撫でる手が止まる。
「お前は、何でそんなに俺の事が好きなんだよ。俺はお前にキスまでするような男だぞ」
『何でって……まだ分からないの?私、ずっと言ってるよ?』
「ずっとって、でもお前ここまでされて…ってえ!!?」
流石に私にここまで言わせているのに気付いてくれない中也さんにムッとして、立原に初めてしたデコピンよりも更に強力なものを御見舞する。
かなり本気でやったけど、相手が中也さんなら全然平気だろうし。
『そこまで私に言わせたのにまだ言わせようとするとか、本当に鬼ですよ中也さん』
「鬼ってなあ!?お前のこのデコピンに比べりゃあんなもん!!」
額を押さえるものの仕返しに何かをされる気配はない。
そりゃあそうよね、さっきまで私ばっかり必死にさせられてたんだから。
『…次同じこと聞いたらもう中也さん知らない、家出する』
「家出!!?おい蝶早まんな!!全力で謝罪するからそれだけはっ!!」
『次同じこと聞いてきたらって言ったのに…』
口では呆れたように言っても、私にいてもらわないとあたふたしちゃう中也さんが見れたのは嬉しかったりもする。
『私にこういうことした後に一々心配しないでいいよ。私は中也さんから離れない…嫌にならないし、寧ろもっともっと好きになるから。相手が中也さんなら、何されてももっと大好きになっちゃうだけだから』
「だからすんませっ……おい蝶、お前それ本気で言ってんのかよ」
『私が冗談で言ってたとしたら、今頃中也さんから離れて二度と会わないようにしてるよ』
ギュッと抱きつけば、少しだけ中也さんが反応したのが分かる。
「お前、ここに来たらもう逃げ場ねえからな…つうわけでもう一回言ってくれ」
『〜〜〜!!!中也さんの馬鹿!もう知らない!!』
勿論そのまま不貞寝した。