第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
『中也さんが私の事好きなのは知ってる。大好きだって、分かってる……でも好きなのか、分かんない』
「は…っ、?」
流石に私が言う事のおかしさに気が付いたのだろうか。
中也さんが私を撫でる手を止めた。
「俺はお前の事、ちゃんと…」
『大事にしてくれてるのも分かってるの。でも知りたいの…ねえ中也さん』
____私の事、好き?
声にならない声で、息の音だけがすうっと漏れて、形になってしまった。
中也さんは普段よりも動揺しているように見えるけれど、怒っているわけでも嫌がっているわけでもない。
だから今、素直に何でも話してしまう私は、日中では考えられないくらいに頭の中が冷静だった。
なんて事を口走ってるんだ、と思うはずが、ああ言っちゃったというような。
目を逸らすことなく、中也さんの目をじっと見据えていられる私が、今はいた。
「…………蝶、お前それ、“どっちの好き”だ?」
『……中也さん…?』
私がしたような聞き方をされて、少し心がぐらりと揺れる。
「好きの度合いの話なんかじゃねえ。お前の言う好きは、どういう好きだ…俺の何をそんなに知りたい」
『…………私は中也さんが私に思ってる事、全部全部知りたい』
嫌ってもいないし怒ってもいない。
なら、その動揺はいったい何なの。
「全部って…んなもん教えてたらキリがねえんじゃ」
『キリがなくなるくらいに想って欲しい。私で頭の中いっぱいになっちゃえばいいのにって、思ってる』
「ち、蝶?お前今日本当にどうした、そろそろ俺も頭が混乱して…っ、!?」
中也さんの首元に擦り寄って、今はチョーカーのついていないそこに、軽く触れるだけのキスをおとす。
中也さんが私にしていたように…ほんの一瞬だったけど。
「おまっ!!何でんなとこ……っ、おい蝶!」
『…私、中也さんの事しか考えてないよ。今日がおかしいんじゃないの、いつもいつも、おかしいくらいに中也さんの事ばっかり考えてるよ?』
首に腕を回して、胸の鼓動が速く大きくなるのを感じながら、中也さんの目を見つめながら小さく言った。
「お前が俺の事考えてくれてんのは分かったからとりあえず落ち着けって…!甘えるのはいいけどお前いつもこんなんじゃなかっ____」
中也さん症候群のせいなのか、勇気を出したからなのかは分からない。
けど確かに私は、中也さんの唇にキスをした。