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第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ


「…蝶、お前今日学校行って何かあったか?髪の毛乾かす時にそんな静かなの珍しいじゃねえか」

『うえ!?何でもないですよ!!?』

ダメだ、結局家に帰ってきてからキスの事ばっかり考えてる。
ずっとこんな調子で挙動不審になって、流石に中也さんからも怪しまれてるし。

「明らかに様子がおかしいんだが…なんだ?俺には言えねえような事なのか?」

ドライヤーからの送風を止めて、さらさらと私の髪に指を通しながら問われる。
コト、とドライヤーを床に置いたかと思えば、

「話したくないなら仕方ねえけど、何でも言えよ。俺はお前の為にならならいくらでも力になってやれっからよ」

なんて素敵な事を言ってくれる。
中也さんって本当に素敵な人…ううん、中也さんだけじゃない。
皆皆、本当にいい人ばっかり。

なのに私は自分のこんな事にばっかり頭がいっぱいになってて、それこそ本当に子供みたい。

中也さんの言葉に罪悪感だって募ってくる。
貴方の気持ちが知りたいんです、なんて素直に口に出せない面倒な私は、口をつぐんで黙り込むことしか出来なかった。

するとそれを気にしたのか、中也さんにベッドの方に行こうと促される。
寝る時になって私が中也さんに甘えられるようになれば、無理をすることなく話せると分かってて彼はそうするのだろう。

中也さんに甘え始めてなんにも気にせず、自分の気持ちに素直に慣れれば、何でも話す事が出来るだろうって…それは確かに正しいから。

何だか本当に全部言ってしまいそうで怖いのだけれど、一緒にいてくっついて、甘えるだけ甘えたいというのもまた事実。

彼の提案に否定する必要なんてこれっぽっちもないため、すぐに大人しく布団に入った。

「…やけに今日は素直だな、んなすぐにこっち来てよ」

『うん…中也さんといるの、好きだから』

「そうか」

いつもと変わらず私を撫でながら反応する中也さんは、やっぱり私の扱いが上手い。
でも、だからこそ余計に気持ちが焦る。

『……私、中也さんの手、好き。声も、髪も、目も口も…私に向けてくれるもの、全部全部大好き』

「お、おう?どうした急に…」

口を閉じる事が出来ない。
何かが危ないなんて分かってるのに。

『中也さんの事大好きなのって伝えたいの』

「もう十分分かってるって、俺だってお前の事大事に思ってんだから」

声が止まろうとしてくれない…
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