第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
『…うん、大丈夫。私色仕掛けなんてする勇気無いから』
「へっ?……あ、あーうん、しちゃダメだからね絶対!」
一瞬トウェインさんが間抜けな声を出したのが気になったが、よく分からないまま流された。
まあ大した事じゃないのだろう。
あんな、あの時みたいな恥ずかしい格好して中也さんの前になんて出られるわけがない。
…でも、もしもそれが出来たら?
中也さんが昨日あんなにいっぱいしてくれた、キスだけに留まらない…あの恥ずかしい行為に、応じてくれたら?
『本当にそれで分かるんなら、それが出来たらどんなにいいか…』
「僕が許さないからね!?ダメだよ色仕掛けなんて!!?蝶ちゃんただでさえ可愛いんだから!!」
『……うるさい!可愛いとか言わないで!ていうか色気とか無いから大丈夫だよ!!』
今日の私に可愛いは禁句だ。
やっぱり反抗期なのかなこれ。
「うるさっ……って、だから蝶ちゃんはその辺気にしなくって大丈夫だってば。まあ本当にキスでもしてみれば相手の反応からして分かっちゃうかもだけどさあ?」
『なっ、何言ってんですか!!中学生に色気とか…っ』
顔が熱くなって自分の膝に埋めた。
だめだ、あの日の想像が思った以上に頭の中に残ってる。
何ともないふりして過ごしてきたはずだったのに。
「うん、そうやってるところが既にもうね。んじゃ僕、このままここにいたらまた蝶ちゃんに手出しちゃいそうだから帰るね、また明日来るよ!」
トウェインさんはまた陽気に言って、返事も待たずに屋根から降りてしまう。
『!…トウェインさん!!私に気遣ってそんなことしなくてもっ』
「言ったでしょ、歯止めが効かなくなったらめちゃくちゃにしちゃうからって。それにそろそろ日が沈むし、早く蝶ちゃんも家に帰った方がいい。彼のところに早く帰りな〜!」
捨て台詞のように響き渡り、トウェインさんはさっさと山を下っていってしまった。
『…………キス、と…色仕掛け……?』
無意識に唇に触れて、胸の鼓動がうるさくなるのを感じる。
自分から、出来るの?
そんな恥ずかしい事…怖い事。
中也さんの言う好きがどっちなのかを聞いた時だって、結局怖くて誤魔化したじゃないか。
でも、知りたい。
最近の中也さんが、何を思って私にああ接するのか。
何を思って、自分からキスをしてくれるのか。