第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
校舎を出てから足を止めて、最早私の恒例の考え事をする場所となった屋根の上に移動する。
というのも、夏休み二日目という割と近い日に帽子を買いに行くとして、その時に私が買いに行けるような状態にあるのかが少し心配になったから。
それまでに何事も起こらず、組合ともポートマフィアとも穏便な関係に落ち着けばいいけど、それは恐らくありえない。
どこかがまた動き出せば、他もまた動く事になる。
一触即発の緊張状態がいつまで続き、どうすれば解決出来るのか…
『組合もやり方が過激なだけで、悪い人達の集まりってわけでもなさそうなんだよなぁ…』
はあ、と溜息混じりに今後自分がどう動こうかを考えようとした時。
「それってもしかして僕とあの子の事?」
陽気な声が、昨日よりも少し大人しめに響いた。
屋根から身を乗り出して下を覗き込むと、こちらを見上げて立っているトウェインさんがいる。
『トウェインさん…あの、伝言は』
「ちゃんと聞いたよ。それにしても本当律儀だね、自分が怖い目に遭わされたってのに」
やれやれと首を振る彼に、中也さんからは気にしないでいいと言われたけれど、やはり罪悪感が湧く。
『だってトウェインさんがわざわざああしなかったら、中也さんに殴られなくて済んだのに』
湿布を貼って冷やしている頬が少し痛々しい。
骨が折れてなさそうなのを見ると、一応中也さんも手加減をしていたのだろうということが分かる。
組合の人だって分からなかったから、一般人かと思ったのかな。
なんにせよ、無事だったようで安心した。
「蝶ちゃんに怖い思いをさせたんだ、これくらいしてもらわないと僕が嫌だよ」
『…お人好し』
「それはそっちでしょ」
クス、と二人して笑いが込み上げてきて、なんとなくリラックスした。
『それで、今日は何しに来たのトウェインさん』
「勿論プロポーズしに『聞いた私が馬鹿でした』あああ待って待って!一応これ本気なんだからね!?」
弁解するどころか本気だなんて付け足す彼に、そんなところから話をしようとする人なんて知りませんと言う。
話をするんならこっちに来ればいいのに。
「え、そっちいっていいの?」
『人と話をする時にちゃんと話したいと思うのは当然かと』
「…うん!」
素っ気なく言ってしまったのだけれど、トウェインさんは口で孤を描いて軽やかにこちらに登ってきた。