第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
「あんたねぇ!あの男が親バカなのは前からでしょうが!」
「そうだよ蝶ちゃん!大体男の人がずっと可愛いって言うなんて、ちょっとおかしいなとか思わないの!?」
口々に私に浴びせられる声に耳が痛くなる。
『だ、だから最近中也さんがおかしいって思うけど、皆がそう言ったからって分かったし…それに綺麗とか褒めるとか前からも結構あったし、押しが強くなったっていうかからかわれてるっていうか……』
「前からって、昔からってこと?」
神崎ちゃんの問いにコクリと頷く。
「それじゃあちょっと難しいのかもしれないね…蝶ちゃん達からしてみたら普通のスキンシップだとしても、周りからしてみればハードルが高い事だったりもするから」
控えめな表現で言う神崎ちゃんだが、そこでやっぱり痛感するものがある。
幸せだけれど、一緒に過ごしている時間が楽しければ楽しいほど、恋愛においてはそれが難しい要因にもなるものだ。
現に中也さんは私がこう思っていることに気付きもせずに、私が想いを伝えようとすればたまに煽るなって言ってとめたりまでして…
『あれ、煽るなって……どういう事だろ』
「どうしたの?蝶」
『ああ、いや…最近何かにつけて、私が気付いてもらおうと告白まがいの事をする度に煽るな煽るなって先を言わせてくれなくなるんですよね。あと何か、やけに向こうからのスキンシップが増えてきてとか…』
向こうから抱き寄せられるとか、抱きしめられるとか、寝るときや普段の生活の中で、こんなにたくさんされる事なんてあっただろうか。
「………中原さん、他の男に嫉妬でもしてるんじゃない?ただでさえカルマ君とかと仲良いし、糸成君には迫られてたし、昨日キスされてたし」
『き、キスって!!!…明日明後日あたりテストじゃなかったの皆!ほら、触手かかってるんだし帰ろう帰ろう!ね!』
中也さんにいっぱいされた昨日の事を思い出してそう言えば、そうですねと殺せんせーが皆を解散させた。
皆に別れを告げた後、殺せんせーとイリーナ先生が残っている教室で、二人にあのお願いをしてみることにする。
『…前に言ってた帽子の話なんですけど。いつ大丈夫そうですか』
修学旅行から帰ってきてから、イリーナ先生とちょこちょこ良い店を探していて、ようやく何箇所かに絞ることが出来た。
あとはお店に行くだけなので、殺せんせーに話そうと考えたのだ。