第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
『わ、たしだって…ちょっとくらい強くなって、っ……』
抵抗してみるも中也さんの手は本当にビクともしなくて、この体制と、中也さんにまじまじと見られているのが恥ずかしくなって顔を背けた。
「阿呆、俺はそんなお前が太刀打ち出来ねえような奴にお前をやらねえように鍛えてきたんだ。そんじょそこらの野郎共も、それにいくらお前といえども負けねえよ」
『やぁ、……っ!そこで喋るの禁止っ…私を中也さんから離すのも禁止!!』
耳に、首に、中也さんの息がかかる。
頭まで響く中也さんの声が、私の神経を刺激する。
「………本当、離したくなくなるような事ばっかしてくれるぜ」
中也さんに動かされてまた私が抱きしめるような形になり、肩から下にかけて彼の腕に包み込まれる。
『充電中に離さないで下さい…次やったら明日の愛妻弁当はデザート抜きです』
「おいおい、それは勿体なさすぎるだろ。何気にあれ一番楽しみにしてんだぞ俺」
『知ってる。中也さんに言わせたかっただけ……っ、何っ…』
自信作のデザートを…甘いものを中也さんが、口には出さないけど好きだって事は分かってる。
私が一番毎日こだわってるものでもあるし、ちゃんと立原や広津さんからもリサーチしているから。
だからそう断言出来たわけなのだが、中也さんがまたやけに私の近くに口を寄せた。
「じゃあこっからはお前が知らねえ事だな。お前の作るもん、デザートに限らず弁当までもが美味そうって話が広まってんだよ、部下共にも…今日も弁当の包み渡しただけで、あの場の全員が大人しくなったろ」
『え、何で!?私中也さんにしか作ってない!』
「そりゃ勿論、俺が美味そうに毎日毎日食ってるからだろ。何か聞かれる度に、うちの可愛い蝶が作ってくれたんだって自慢してっからな」
まさかの自慢ときた。
親バカ通り越してデレデレだよ!!なんてことしてるのこの人!!?
てかお弁当見ただけで黒服さんたちまで私に敵意見せるのやめたの!?
理由そこなの!?
「まあ当たり前だが、食うのは俺だけだがな」
『親バカぁっ…なんでそんな褒めちぎるの!デレ期突入ですか、そうなんですか!!』
ヤケになって心の底から思う事を言えば、中也さんからとどめの一言が降り注がれる。
「そうやって必死になるお前が見たかっただけだ……やっぱり可愛い」
やっぱりここ最近の中也さんがおかしい…