第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
「そ、そうか…だがまあ椚ヶ丘の方でも何かあるやもしれん。もしもの時は自分の能力をばらしてでも、全員連れて探偵社の元へ来い」
何かあっても、探偵社にさえ行けば与謝野先生がなんとかしてくれる。
確かにそれはいい最終手段だ。
『はい、本当にやばそうな時はそうさせてもらいますね。』
「ああ、くれぐれも一人で無茶はするなよ」
『ふふっ、はいはい』
「くれぐれもだぞ!!もう切るからな!!!」
『は、はい…では』
最後の最後にまたすごい声が響いて、また頭がクラクラした。
「終わった…よな。にしても何だ、すげえ声だったな、ビビったぞ」
『うあ…今度絶対谷崎さんに釘さしとかなきゃ』
ぼーっとする頭で迂闊に口を開いたのが間違いだった。
「あ…お前戦闘中に何人庇って壁使ってやがった!?どうりでふらついてたわけだ、やっと筋が通ったぜ!!」
『あ、ああもう勘弁、もうお説教は!!』
「お前の周りの奴らだって弱いわけじゃねえんだろ?心配はいいがお前がそこまでしなくっても…」
はあ、と呆れる中也さんはお説教の勢いもなくて、少し安心もした。
けれど、私が谷崎さんに首領に中島さん、それに負ける事なんてないであろう中也さんにまでかけていたのは、並々ならぬ不安が胸につっかえているからだ。
「……蝶?お前なんでまたくっ付いて…」
中也さんの腰に手を回して顔を埋めれば、宥めるように背中を撫でられる。
『…誰にも死んで欲しくない。誰にも、離れて欲しくない』
「!それで俺なんかにまでかけてやがったのか?」
コクリと小さく頷けば、また溜息が聞こえる。
「お前がそれでへばってたら、本当にやばい時に助からなくなるだろうが?もしもの時のために温存しとけ、それに俺ならなくっても大体大丈夫だ。知ってんだろ」
『………ん』
それでも、自分が連れ去られる恐怖を知っているから。
それが忘れられないから、不安はとれたりなんてしない。
国木田さんにはああ言ったが、全然大丈夫だなんて思ってない。
いつ、どんな手を使われるのか…不安で不安で仕方がない。
「…前に言ってたじゃねえか、連れて行かれても俺が助けてくれるだろって。今回は敵の目星だってついてんだ、もしお前がそうなっても死に物狂いで連れ戻すさ」
『……分かってる。でももうちょっとだけ』
もうちょっとだけ、貴方にこうして触れていたい