第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
「つかいつも疑問だったんだが…お前よく毎日こんな凝ったもん作れるよな。いつの間に覚えた?」
『元々作れたけど中也さんが作らせてくれなかっただけです』
お弁当を広げて心なしか目を輝かせながら問う中也さんに、少しだけむくれて返事をする。
「俺かよ…今でだって何か起こるんじゃねえかって冷や冷やしてんだぞおい」
『いやいや、女の子に料理くらいさせて下さいよ』
「料理をするのはいいがお前に刃物と火を扱わせんのが心配で『親バカ』馬鹿!!?」
そんなに私が信用ならないかこの人はとも思ったのだが、料理中に何か心配して話しかけられるようなこともないため、やはりただの心配性の鬼なのだろう。
『私の作ったもの、食べたくないですか?私中也さんに食べて欲しくて味付け研究して…って……!』
ついうっかり口を滑らせた。
やはり自分の作り方と中也さんの作り方とでは味に差が出来てしまい、何とか彼の好きな味付けに…普段私が食べさせてもらっていた味にしようと、こっそりこつこつ試行錯誤しているのだが。
そんなことを言うつもりなんてなかった私は、ハッとしてすぐに中也さんから目を逸らす。
「お前いつの間にそんな事!?どうりでやけに俺が好きな味だと…」
『好き!?美味しい!?』
勢いよく食ってかかるように私の言葉に反応した中也さんだったけど、彼の発言に耳を疑ってまた言葉を遮る。
恥ずかしさなんて忘れて、中也さんの方を振り向いて、今度は私が目を輝かせる番だった。
「おおっ!?何でそんないきなり…っ、いつも言ってんだろが、美味いって」
『…好き?』
小首を傾げて目を見て言えば、中也さんの動きが止まった。
少しの間返答を待っていれば、中也さんは私を撫でながらそっぽを向いてしまう。
「……おう」
照れているのか耳がちょっとだけ赤みを帯びていて、それだけでも
作っててよかった、頑張っててよかったと思える。
思わず笑みがこぼれて、暫く彼の手にあやされていたその時、携帯が振動した。
『あ…電話出ますね。探偵社の先輩からです』
「あ?…ああ、俺は耳塞いでっからここで出ろ。駐車場じゃ危ねえ」
私の返事も聞かずに耳を塞いでしまう彼は、また持病を発症したのだろうか。
とりあえずすぐに通話を開始したのだが
『はい、もしも…「馬鹿か貴様はあああ!!!?」』
国木田さんの怒号が響き渡った。