第2章 暗闇の中で
__武装探偵社 事務所__
『ただいま帰宅しました、こんばんは~』
「あ、おかえりなさい!」
私を待っていたのは、先日芥川さんの羅生門で重傷を負っていた谷崎さんだった。
『谷崎さん!あの、もう大丈夫なんですか!?』
「うん、もうすっかり良くなったよ。与謝野先生の治療……は勿論だけど、君のおかげでもあるんだよね、ありがとう。」
『いえ、元気になっていただけてよかったです。…ところで、何回やられたんですか?』
恐る恐る聞いてみた。止血のために外傷を移しはしたが、火傷は私の体でも治すのに時間がかかるので、そこは与謝野先生に任せていた。
火傷だけに抑えはしたから、まだマシな回数だとは思うけど…
「………………2回、やられました。」
『お、お疲れ様です…』
つまりは2回切り刻まれたって事ですよね、谷崎さん。
因みにナオミさんの傷は銃による外傷だけだったので、私の能力で完治済だ。
谷崎さんに同情しつつも、やけに静かな探偵社を見て疑問を持った。
『今日、他に誰かいらっしゃらないんですか?』
「ああ、蒼の使徒の一件が今朝方解決したらしくて国木田さんや太宰さんは早めにあがったんだ。敦君は与謝野先生の買い物の付き添い、だったんだけどね?」
どうやら、医務室に何かあるようだ。
寝台に人影が見えた。
「泉 鏡花さんっていうらしいよ。ポートマフィアの子らしいんだけど、訳ありで敦君が助けて連れ帰ったらしい。」
『へぇ、ポートマフィアの?よくやりましたね中島さん、お手柄じゃないですか!』
「うん、与謝野先生は、明日あたりにでも目が覚めるだろうって。」
よくよく見てみれば、懸賞金にかけられている子だ。
確か、六ヶ月で三十五人殺したとか……
それを考えると、一時期、それとは比にもならないような殺人を続けていたものの、最終的に中也さんによってそれを抑えられるようになってたわたしはまだ幸せなのだろうか。
この歳の子にそんな数の殺人、普通に考えて耐えられるわけがない。
私みたいに普通じゃない人間なら話は別だけど。
『早く良くなればいいですね……って、あ、太宰さんだ。』
医務室から出て、思い出したとばかりに太宰さんの名を口にする。
「どうしたんだい?」
『いや、おかしいなと思って。毎日私に心中を求めてきてた太宰さんが、今日一度も私のところに来てないんですよ。』