第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
『…中也さん、何で今日そんな事ばっか言うの……?』
外套を握りしめて、恐る恐る聞く。
そんなに可愛い可愛いなんて、この人から言われることなんて滅多に無いのに。
「あ?お前が前に言ったんだろ、言うなら普段から言ってくれればいいのにって」
『!!……っ、でも子供っぽいのなんか』
「あー…子供っぽいは訂正するか。難しい事なんか考えずに、無邪気にしてりゃいいって事だよ。お前がわがままだと思ってる事なんか大したもんじゃねえから、お前が言うに子供っぽくお願いしてろ」
じゃねえと甘やかしてやれねえだろ、と照れたように小さな声が響いた。
私の事を、子供だと思ってるわけじゃないの?
餓鬼だって、年の離れたただの小さい奴だって思ってるんじゃ、なかったの?
『…次からちゃんと、連れてってくれる?』
「おう、約束する」
『私の事心配でも、離れないでいてくれる?』
「状況にもよるが、出来るだけそうしてやれるようにするよ」
『…………私の事置いてかない?』
「置いていかねえ。もし次また置いてったら、今度こそ全力で俺の事を殴れ」
目を合わせようと上を向けば、中也さんはしゃがんで私と目線を合わせ、両頬に手を添えてニカリと笑う。
今回は私が擽ったくならないよう考えてか、頬以外に指は触れなかった。
「んで、他には何かお願いはあるか?可愛い可愛い蝶さんよ」
『!!……~~~可愛い禁止っ』
「それは聞けそうにねえかもなっ……とっ」
恥ずかしいけど嬉しくて、どうしようもなくなって結局いつものように中也さんの首元に抱き着いた。
そしてやはり、毎度の如く私の身体が中也さんを欲して、離さなくなる。
「なんだよ、さっきまでに増して甘えてきやがって。例の持病か」
『…中也さん症候群』
「俺が自分でそれを言うわけねえだろ…で、お前俺にくっ付いてんのはいいがとりあえず昼メシ食うぞ」
私を突然抱え上げて、彼の車が止められた場所に運ばれる。
『なんでいきなりっ…中也さん!?』
「うっせえな、お前はとりあえず背もたれあるところに座ってから飯だ、飯。首領から聞いた話じゃ、また結構な強度の壁を使ったんだろ」
口角をひきつらせながら黒いオーラを纏い、笑いきれていない中也さんの声が聞こえて大人しくする。
『む、無理してないし…』
「貧血なのはどこの誰だよ」
『いっ、…たくない』