第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
『……なんで、分かっちゃうの…?こんな子供みたいな考えで中也さん怒らせたのに、なんで怒らないの…?』
考えれば考えるほど子供じみた理由じゃないか。
中也さんを心配していたのは、私の見ていないところで彼に傷付いて欲しくなかったから。
頼って欲しかったのは、私の事を必要として欲しかったから。
そんな事、全部……置いて行かれて悲しくなったのだって、怒ったのだって、全部全部寂しかったから。
寂しくなって悲しくなって、悔しくなって怒っちゃって。
なのに、こんな理由で私を心配してくれていた中也さんを怒らせたのに、彼はどうしてもう叱らない?
どうして中也さんは、私を抱きしめる手を離さない?
なんで中也さんは、私のした事を嬉しいだなんて言う?
「馬鹿、子供じみてたっていいじゃねえか、何が悪いんだよ」
『だってそんな事で中也さんの事怒らせた。中也さんの、邪魔した』
「俺を助けてくれたんだろ、勝手に捏造してんじゃねえよ。それにお前、反抗期も八つ当たりもなしにわがままも言わねえ奴の方が人間ダメになっちまうもんだ。……まあお前の場合、わがままにもなってねえような可愛いもんだがな」
そういう意味で言ったわけじゃないって分かってるのに、この人から言われる“可愛い”には、反応せざるを得ないのが私。
泣きそうなのに、嬉しいのに、なのに恥ずかしいどうしようもない私の顔はぐちゃぐちゃになってて。
『可愛くないっ…全部中也さんに言わせただけっ、私何も言ってない』
隠すようにして中也さんの胸元に顔を埋めれば、私の言葉にまた中也さんがクスリと笑う。
「お前はちゃんと言ってたんだろ?なんで置いていったのかって…立原にしか言ってなかったのは気に食わねえが」
変なところで立原に対抗心を燃やす中也さんの事はよく分からないが、とりあえずは自分に最初に言って欲しかったという事なのだろうか。
「そんだけ聞けりゃ十分だよ。お前はそんな事を言うだけでも、俺からしてみりゃ素直な方だ。それすら言ってもらえねえ時あるからな」
『…素直じゃない、可愛げない。それに子供っぽい』
「素直だよお前は。分かり易いんだよ何考えてんのか…後お前が変に背伸びして大人になろうとしなくたって、子供のうちは子供のままでいればいいさ」
子供じゃダメなのに…
思った直後に衝撃が走る。
「そこがお前は可愛いんだから」