第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
『それだけじゃない…中也さん、私の事頼ってくれなかった。ポートマフィアが、中也さんが大変な事になりかけてたのに……私の事頼ってくれなかったじゃない』
心配していた事。
それさえ彼に伝わっていたのなら、あとの言葉は素直に次々と溢れ出てくる。
「そこは俺にもちょっとは言わせろ。別にお前が力不足だからとかじゃなくてだな……組合が…お前を狙ってるような奴等がいる場所に行こうとしてんのに、お前を連れて行きたくなかったんだよ」
『……っ、それでも私、怒ってるんだから!…怒ったん、だからっ』
私を宥めるように背中と頭を撫でる中也さんの胸元を、怒りをぶつけて強く叩こうと思うのにそうできなくて、弱々しく拳をぶつける。
それに中也さんは怒りもせず、抵抗もせず、小さい子供をあやすようにして私の手を受け止めた。
「俺だって怒ったさ、何でわざわざ書いてきたのに俺の頼みを無視して来たんだって。…でも、結局お前に勝てねえ俺は、最終的に何でもっと別の方法を思いつかなかったんだって自分に対して怒った」
自分に対してと言った中也さんに、思わず手を止める。
「蝶が来てくれて、お前ほど頼りになるやつはやっぱいねえって心底思わされたよ。頭は回るし、自分の能力だって理解しきってる…おまけに俺の言おうとすることだって、簡単に汲み取って行動してくれる」
仕事関係でだけだがなと少し笑って言う彼に、少しだけ強めに拳を入れた。
「いっ!?」
『……最後のいらない。それに、いくら褒めたって機嫌なんて直らないんだから』
「だからなあ!?…結局お前に助けられて、来てくれた事が嬉しくもあったんだよ」
胸がドクンと波打つ。
「俺の事心配して追っかけて来てくれて、俺の事を考え過ぎてるくらいに考えて…弁当持ってくるためなんて口実作ってまで会いに来てくれて、嬉しかった」
そんなところまで気付いていたのか、この人は。
中也さんと話をするための口実が欲しくて…会う理由が欲しくての事だったって。
「俺も、お前のせいで移っちまったのかもしんねえが…蝶、お前さ……寂しかったんだよなぁ、悪い、気付いてやれなくてよ…」
ギュッと身体を密着させて、中也さんは全てを声にする。
寂しかった。
そうだ、そもそも最初から、心配は勿論していたけれど……ただ単純、に寂しかったんだ。
中也さんと、一緒にいたかったんだ。