第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
奥の扉に連れ込まれて、谷崎さんの隣に捕えられる。
丁度ドアに一番近いところだから、なんとか窓から外の様子も見えた。
『…谷崎さん、意識、ありますよね』
「!……その声は蝶ちゃんか。どうして君が」
『中島さんが勝つためにです』
きっと、あそこに首領がいれば、私の考えを分かってくれるはず。
私の言わんとすることを、中島さんが困った時に、ちゃんと伝えてくれるはず。
『そこで谷崎さんには、細雪を使ってもらいたいんですが』
「細雪を…?でも僕、今こんな状態だし」
『ほら、弱気にならない!今ここには私もいるんですから…』
谷崎さんの身体に膜を張るように壁を作り、それを押し広げて、谷崎さんと谷崎さんを捕らえる敵の異能力の手の間に隙間を作り出す。
「こんな事が…っ、いつ使えばいい」
『中島さんがピンチになった時。そして、相手が最も油断をする瞬間に』
話している内に、中島さんがドアの鍵を開けようとした。
けど、その鍵は生きているように形を変え、鋭利な動く針のように中島さんを攻撃する。
『鍵にまで細工してあったとは…予想の範囲内。谷崎さん、ちょっと予定より早いけど、細雪お願いします。ここの鍵…ドア、開けますから』
「!成程、分かった……細雪!!」
谷崎さんが細雪を発動した瞬間に、敵の手に渡った鍵を移動させて目の前のドアの鍵穴に差し込む。
こればかりは目では見えないところだから、音と感覚で判断するしかない。
かなりの集中力がいるが、ここなら敵は来ないし、こんな状況今までいくらでも経験してきた。
『……!開いた!開きました、後は中島さんが…』
鍵の開いたドアを開ければ、外では中島さんがこちらに気付き、天井に掛かっていた大きな長いリボンを手に持っている。
そしてアンに捕まってこちらに捕まるふりをして、ルーシーさんの身体にしっかりとリボンを巻き付け、それを離さずに…ドアに入る直前に、腕力だけで拘束具に抗う。
ルーシーさんには、リボンも中島さんも見えていない。
そこで谷崎さんは細雪を解除し、中島さんが種明かしをした。
そして持っていたリボンの端を思いっきり引っ張ってルーシーさんを捕らえ、異能力を解除しなければ一緒にドアの中に落ちると選択を強いる。
「異能力は便利な支配道具じゃない、それは僕がよく分かってる。選択は一瞬だからね」
中島さんは、腕を離した。