第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
中島さんの提案に頷いて、首領の周りを囲んでいた壁を解除し、隣につく。
私としては中島さんの人柄を知っているから何も思わなかったものの、首領は思うところがあったのか少し驚いていた。
「…彼は蝶ちゃんを使うことなく、私と一緒に自分が守りきる気なのかい?」
『中島さんはそういう人です。…探偵社の皆、あんなふうにあったかい人達ですよ』
首領と小声で会話を交わしているうちに、ルーシーさんが話し始める。
「可愛いアンと追いかけっこをして…タッチされたら皆さんの負け。捕まる前にその鍵でドアを開ければ、皆さんの勝ちよ」
中島さんの目の前に金色の鍵が現れる。
『!…谷崎さん、中島さん!それなら私が出た方が』
空間操作をすれば、この部屋のルールにのっとっていてもすぐに片をつけられる。
だけど、二人が動きそうな気配はない。
「蝶ちゃんに危ない事させたくないから、そこでいて。…それに組合が君を狙っている以上は、下手に敵の前に出したりなんて出来ないよ」
『……危ないと思ったら、意地でも邪魔しに入りますからね』
谷崎さんも中島さんもこくりと頷いて、ルーシーさんに向き直る。
「それで、参加されるのは誰?」
「二人同時でもいいのか」
「勿論よくってよ?お遊戯は皆でやる方が楽しいもの!」
谷崎さんと中島さんは臨戦態勢になって構える。
中島さんが鍵を手で取って、それを握りしめて、ルーシーさんが合図を出す。
「準備はよろしくって?……レディー…ゴー!!」
ルーシーさんの声が響いた瞬間、アンは突然目の前から姿を消して、谷崎さんを後ろから捕まえていた。
「一人目…捕まえた!」
「谷崎さん!!」
中島さんも私も首領もそれに振り向くが、すぐに奥のドアが開いてその中から伸びてきた無数の手に、谷崎さんは捕えられた。
「うわあああああ!!!」
そして一瞬で中に連れ込まれて、パタリとドアが音を立てて閉まる。
その様子に狼狽えた中島さんは、足がすくんだように動けていない。
『!中島さん、避けて!!』
「え、蝶ちゃん…?」
『何してるんです!早く……!!』
自分の元いた場所と中島さんのいた場所を入れ替えて、迫ってくる人形…アンに捕まった。
仕方がない、ここで相手を警戒させるよりは、中島さんの勝機を作るために油断させた方がいい。
「どうしてっ…!」
『……頑張って』