第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
賢治さんは昨日組合の人を案内しに行ってから、ナオミさんはたった今、一緒にいたのに消えてしまったそうだ。
『二人が消されて…!谷崎さん、中島さん、あれっ……』
青になって人の混雑する横断歩道の中見つけた、もう一人の組合の人。
長い赤毛を三つ編みにした女の人に向かって、谷崎さんが我を忘れたように走り出す。
「谷崎さん!!危なっ…」
中島さんが走り出そうとした瞬間、女の人が谷崎さんの方を振り返った。
狂気じみた笑みを浮かべたその人から、首領を守るようにして彼の前に立って臨戦態勢に入る。
「蝶ちゃんっ、あれは…」
『組合の構成員の一人です!昨日、探偵社で顔を見ました!』
異能力を発動したのか、辺り一辺が眩しい光に包み込まれる。
思わずその眩しさに目を閉じて暫くすると、光はおさまって辺りがやけに静かになった。
おかしいと思って目を開けると、そこは広い広い子供の遊び部屋のようなところ。
所々に大きなプレゼントの箱やおもちゃにぬいぐるみ、天井には長いリボンが飾り付けられている。
私達以外にも、横断歩道にいた多くの人がここに移動させられていた。
『…空間系のものなら、破れますが。どうしますか?“森さん”』
「確かに蝶ちゃんに頼めば早いだろうが…ちょっと痛い目を見てもらった方が良さそうだ。それに、君のいる探偵社の仲間が、どんな人なのかを見たい」
『!……分かりました、一応壁だけ張っておきますね』
「無理はしないでおくれよ?後で中原君が怖いからね」
首領の周りに壁を張って、中島さんと谷崎さんの元に移動した。
「皆さんようこそ!アンの部屋へ」
綺麗な笑顔で挨拶を始める女の人に、怒りが抑え切れていない谷崎さんが話しかける。
「…ナオミはどこだ」
「あらごめんなさい、その説明が最初よね?探偵社の皆さんはあっちよ」
女の人が指さしたのは、奥の方にあった緑色の扉。
谷崎さんが駆けていくが、鍵が開かないのか入れそうにないようだ。
「くそ、開かない……!賢治君、ナオミ!!」
「鍵無しでは開かないの。開くのはあっち」
次に指さされたのは、私達の後方にあった白い扉。
金色のメルヘンチックな装飾がなされている。
『…白い扉だなんて、私へのあてつけなのかしら』
ボソリと、誰にも聞こえないような声でそう言った。
賢治さんとナオミさんは、絶対に取り返してみせる