第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
どこかに歩いていきながら、立原と広津さんに何があったのかを教えてもらった。
なんでも、ポートマフィアのフロント企業の入った七階建てのビルが跡形もなく消滅したとか。
それで、首領がエリスちゃんと外出をしている為、安全の為に影から護衛としてついているらしい。
構成員の事務所があった場所でもあったビルを、建物ごと消せるような異能を持つ輩が組合にいる…
恐らくその輩は、首領を狙ってそこに来る。
首領の狙いはそこだろう。
きっと、そこを狙って、与えられた負債を返すのだ。
『ねえ、それ本当に消えただけ?』
「あ?壊れたような跡も、瓦礫一つも残ってねえんだぞ?しかもこっちが気付かねえうちにやられてんだ、ものを消すことが出来る異能としか…」
確かに私も最初はそう思った。
でも、恐らくそんな事は無い。
『ねえ立原。異能力ってさ、ただの便利な支配道具じゃないんだよ』
「…なんだよ、いきなりそんな事」
『私の能力でさえも、ただただ便利なだけのものじゃあない…都合よく、思うがままにものを消すだけの能力なんて、無いんだよ』
広津さんも気になったのか、私の方に視線を向けた。
黒服さん達も私の声に耳を傾けている。
「だから、何が言いてえんだよ結局?俺にはさっぱり…」
『……消すんじゃなくて、自分のところでもっているんなら?私みたいに、色々なものを入れ替えるとか…あるいはストックをしておくような異能なら、ビルがあそこから消えたのに納得がいく』
私の話が聞こえたのか、中也さんが歩くのをやめた。
『だから正確に言えば、ビルは消えたんじゃない…その人の手の内にあるっていうなら、そのビルを辿ればいいんだよ』
口角を上げて、白い蝶を集め、大きめの扉を作り出す。
その様子を見て、立原や広津さん、銀さんに黒服さん達だけでなく、中也さんまでもが唖然とする。
扉を開けて、その先を覗けば、予想通りの光景が広がっていた。
『…ほら、当たり。向こうはまだ気付いてないし、何よりあそこの影にいるのって、ポートマフィアの爆弾魔の梶井基次郎さんだよね』
ニコリと言えば、皆して扉の先を見にこちらに駆けてくる。
私がさっき中也さんに向けて扉を作ったようにして、消されたというビルを思い浮かべて少し高度のあるところに扉を作れば、昨日探偵社にフランシスの付き人として来ていた男の人が見えた。