第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
「おいお前、いいのかよ!?……って何で俺に隠れる!?幹部に後でどやされんの俺なんだぞてめえ!!」
『やだ!私だって怒ってるんだからっ…、立原だって、何で私の事呼んでくれないの』
立原のジャケットの裾を握りしめながら、ぽつりと本音を漏らした。
「何でって、そりゃお前、中原幹部が……」
『………やっぱ立原のとこいる。黒服さん、これだけ中也さんに渡して下さい』
私が出したものを見て、黒服さんたちは何故か皆納得したような顔を見せて、中也さんにそれを渡しに行ってくれた。
私はテレポートで立原のところに移動したため少し距離が離れていたが、中也さんは酷く驚いた声を上げる。
「お前っ、まさかこれの為に来たのか!?」
『…教えない!暫く中也さんなんて知らない!!』
「蝶!!?」
私の拗ねように昔からいる黒服さんや広津さんまでが驚いている。
立原が一番困惑しているのだけれど、それでも私は動かない。
「あああ話は後で聞いてやる!!だからとりあえず、組合の奴らが動いてっからお前は早く帰れって…」
『………何で私だけ置いてっちゃうの。何で、私に頼ってくれないの』
呟いた声は立原にだけ聞こえていたらしい。
「……ああ…中原幹部。幹部の元から俺遠くに行かないようにしますから、こいつここにいさせてやってくれませんか」
「なっ、立原!?手前蝶が危なくなるかもしれねえこと分かってんのか!!」
立原は私の頭に手を置いて、中也さんに頼んでくれた。
「でも、一人でどこかにいさせるよりは、幹部の近くにいた方が安全かと」
状況はよく理解出来なかったが、中也さんはその言葉に納得せざるを得なかったようで、
「………仕方ねえ、勝手にしろ…蝶、お前立原んとこから絶対離れんな。後でちゃんと話はするからな」
と言って、煮え切らない態度で踵を返して歩いていく。
「ほら蝶、いいってよ。行くぞ」
『……ありがと、立原』
私が立原にお礼を言ったのが聞こえたのか、中也さんは足を止めてこちらに歩いてきた。
『なっ、に…私謝りませんか、ら……っ、?』
私の目の前でしゃがみ込んで、ふわりと私の頭を撫でる。
予想もしていなくて今度はこちらが呆気に取られた。
「…………礼を言うのを忘れてた。弁当、わざわざありがとな」
それだけ言ってからまた私から離れて、歩いて行ってしまった。
『…ずるい』